我々イノサイトは、ベンチャー投資部門を通じて新規事業の収益性見通しを評価する時、経営チームが次の2つの質問にしっかり答えられるかどうかを確かめるようにしている。

1.商品の製造・販売関連コストを賄うに十分な取引代金を、どのように請求するか。

2.運営に必要な固定費を賄うために、十分な取引量をどのように生み出すか。

 上記への回答が仮説に過ぎないことはわかっている。そのベンチャーが市場で経験を積むにつれ、答えは変化していくはずだ。実際、経営チームが利益の獲得について自分たちのやり方のみにこだわるのであれば、我々は不安を抱くだろう。ベンチャーキャピタリストのフレッド・ウィルソンが指摘するように、最初から1つのビジネスモデルにとらわれてしまうことは危険だ。しかし、経営チームが利益への道筋について何らかの考えを持っていると確認できれば、やがてその事業は望ましい結果に至るだろうと我々は判断する。

 企業はあえて利益を出さない方針を選択する時もある。つまり、個々の取引は採算が取れるが、会社として長期的な優位性を確立するために、インフラ構築やマーケティングに投資している場合だ。アマゾンは長い間この範疇に入っていた。効率的なサプライチェーンによって、同社の個々の取引は低価格でも採算が取れるようになった。だが創業者のジェフ・ベゾスは事業の規模拡大を情熱的に追求し、大々的に拡張投資を実施した。これは、儲ける仕組みを見出していない企業のケースとは異なる。仮に何らかの理由でベゾスが投資資金を得られなかったとしても、支出を削減して利益を確保することは容易にできたはずだ。警戒すべきは、収益を上げる方法について信頼できるアイデアを持っていない企業だ。

 ハーバード・ビジネススクール教授(およびイノサイト共同創設者)のクレイトン・クリステンセンは、イノベーターたちに「成長は辛抱強く待ち、利益は性急に求めなさい」と指導する。だが、このルールには驚くべき例外がある。たとえばアップルの〈iPad〉は初年度に100億ドルの収益をもたらした(辛抱強さはまったく必要なかった!)。アマゾンは投資への渇望が抑えられないように見えるが、時価総額は膨大だ。グルーポンはゼロからスタートして2年後には10億ドルの収益に達した。

 これらの事例は素晴らしいものだが、あくまでも例外だ。自分たちも例外になろうと目論んでも、やがて失望に終わる可能性が高い。現実的な計画を立てて、たまたま幸運の女神が微笑んだとしよう。もし若い起業家がアドバイスを求め訪ねてきたら、せめて思い出すことだ――あなたの成功には幸運も作用したということを。


HBR.ORG原文:The Get-Big-Quick Fallacy June24, 2013

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スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイト マネージング・ディレクター
ダートマス大学の経営学博士・ハーバード・ビジネススクールの経営学修士。主な著書に『明日は誰のものか』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(共著)などがある。