「守・破・離(しゅはり)」の
精神は人材育成の根幹に通ず

日本型人事戦略(新卒一括採用・終身雇用)のポテンシャルを引き出すという意味において、新人研修などのプログラムはやはり重要ということですね。

 当社では、グローバル人材育成と同時に、新卒社員や若手社員領域の育成にも力を入れています。新卒社員を一人前の社会人にしていく研修ですが、教育の際に一番の鍵となる「習慣化」を重視したプログラムを組んでいます。

 例えば「報告」「連絡」「相談」や「ゴールを自分で設定する」「問題が起きた時に原因を分析して改善策を練る」といったビジネスにおける基本行動やマインドセットも、知識として知っているだけではなく、入社3年以内に習慣化することでしっかりと身に付けることが大切です。

まさに「習うより慣れろ」。社会人の最初の段階でクセやゆがみのないフォームを身に付けておくと、その後スムーズに成長していけるようにも思います。

 ゴルフなどのスポーツにも近いのかもしれません。その意味では、武道や茶道の世界でいわれる「守・破・離(しゅはり)」の精神が人材育成にも必要だと思います。最初は教わった「型を守る」ことから入り、その後自分なりにそれを「破る」ことでスタイルを模索し、最後にそれらから「離れる」ことで新しい型を築いて伝承していくということですが、ビジネスにも同じことがいえるのではないでしょうか。

 一般的には3年ないし年といわれる新人教育の期間に、仕事の原体験としての「守」をしっかり固めることは、その人の人生にとっても会社の発展にとっても重要だと思います。しかし、研修で知識のインプットは行われても、その後その知識がどれだけ習慣として定着したか、現場の行動にどう結び付いたかについて、日本の企業ではそこをあまりカバーしてこなかったのではないでしょうか。

 われわれは、そこを変えていきたいと考えています。知識のインプットのみでなく実践としてのアウトプット、つまり、「良い型」を繰り返すことで行動として習慣化できるようになることを目標としているのです。新卒社員研修のプログラムにも、今後定着度を可視化するアセスメントを実施する必要があると考えています。

研修効果の見える化ができれば、企業も人材育成にさらに積極的な意義を見出せます。

 実際、われわれのプログラムを導入された企業の担当者の方には、自身がそういったトレーニングを受けた経験があり、その効果を実感したことから研修の必要性を感じている方がたくさんおられます。一方で、「OJT(On the Job Training、職場内訓練)で十分」と考える方もいるでしょう。どちらも正しいと思います。

 われわれも含め業界全体の課題ですが、これまでは何をもって効果とするのかを明確にする作業を怠ってきたことは否めないと感じています。もちろん効果のすべてを数値化することができるかといえば、そうとは言い切れませんが、見える化できる部分に関しては、今よりもさらにできることがあると思うのです。