「健全な緊張」から最良の意思決定が生まれる

――意思決定の権限が分権化すると、分野横断的なコラボレーションが少なくなると思います。業績が良い組織は、コラボレーションをどの程度重視しているでしょうか。

 コラボレーションは非常に重要です。会社を挙げてサービスを売り込みたいと考えている時には、その企業の様々な要素を持ち寄って、組織の壁を取り払って動かなければなりません。その時には縦割りではなく、多くの部署やスペシャリストたちと連携し、分野横断的な協力体制を社内に構築する必要があります。その歯車がうまく回れば、他社に先んじて高業績を上げることができるでしょう。

――専門性とコラボレーションをうまく両立させるコツは何でしょうか。

 大企業、特にグローバル企業では必ず、組織全体にわたってチェック&バランスが働く仕組みができています。AIGやIBMといった世界的大企業に共通しているのは、マトリックス組織です。

 スペシャリストはその製品・サービスに最も詳しい人であり、プロダクト・リーダーとなるべき人です。一方のジェネラリストは、より広範な視野をもって、クライアントに対して異なる製品・サービスも提案できるかどうか、ソリューション全体の売り込みができるよう、両にらみが可能な人を指します。このように縦型のスペシャリストと横型のジェネラリストがコラボレーションすることで、最大の価値提供がクライアントに対して行えるようになるわけです。
 スペシャリストとジェネラリストが協力する際、時には「健全な緊張」(Healthy Tension)が生まれます。この健全な緊張状態が、最高の製品・サービスを生むためには不可欠です。なぜなら、拮抗しあう二者が意見を持ち寄って戦わせ、出した結論に基づいて意思決定を行うわけですから、その結果はクライアントにとっても、会社にとってもベストの決定であるはずだからです。また、意思決定の分権化が起こっても、意思決定を行ううえでの説明責任も分散するため、あらゆる階層でこうした健全な緊張が保たれ、チェック&バランスが同じように機能するのです。(後編に続く)