IBMの元CEOサミュエル・パルミサーノは、同社を「価値観に基づく経営」(value-based management)にシフトする改革の先頭に立った時、数万人の従業員にIBMの価値観について「自分独自の宝くじ」を書く機会を与えた。3日間にわたるオンラインでのディスカッション・フォーラム(バリューズ・ジャムと呼ばれた)を通じて、5万人以上の従業員が、1世紀前に掲げられたIBMの経営理念を文字通り書き換える作業に参加した。

 上記ほど宝くじの知見に忠実ではないが、別の事例を挙げよう。あるグローバル消費財企業では、CEOが組織上層部の300名を招集し、2日間の「リアル・ワーク」と呼ばれるセッションを3カ月の間に3回開催し、自社が追及すべきストーリーをともにつくり上げた。これもまたかなりの時間の投資となったが、トップ300人によるその後の5倍以上のコミットメントを考えれば、その価値は十分にあった。ストーリーは、少人数の作業グループによる1~2日間のセッションを介して組織全体に展開され、各セッションでストーリーがそれぞれの部署や業務に与える意味や影響について検討された。

「宝くじ」の知見を活かすために企業のリーダーが最低限やるべきは、ストーリーについて語るだけでなく、ストーリーについて「問いかける」ことだ。エマーソン・エレクトリックのCEOデイビッド・ファーは、社内で会うほとんどすべての従業員に、自社のストーリーに関する4つの質問をすることで知られる。(1)あなたはどのように違いを生み出していますか(会社の方向性に即しているかどうかの確認)、(2)どのような改善案に取り組んでいますか(継続的改善の強調)、(3)最後に上司のコーチングを受けたのはいつですか(人材開発の重要性の強調)、(4)敵は誰ですか(縦割りをなくすこと、「ワン・エマーソン」の強調。正しい答えは競合他社であり、他の部署ではない)。

 最後に記しておきたい。従業員を深く巻き込むアプローチは、変革への当事者意識と意欲をもたらすだけでなく、彼らが生み出す答えの質を高める。このことが多くの企業幹部を驚かせている。シスコシステムズの会長兼CEOジョン・チェンバーズは、HBRのインタビューでこの点に関する自身の経験を語っている(邦訳は本誌2008年12月号「シスコシステムズ:コラボレーションの時代」)。「私も最初は、コラボレーションについて学習するのが大変でした。それまでの私は、会議に出るとすぐに、他の役員たちが10分間ほど討議しているのに耳を傾け、そして答えを把握し、最終的にはこう言っていたのです。『わかりました。では、こうしましょう』と。

 しかし、他の役員たちに任せ、正しい結論が導き出されるのを待つことを学んだ時、彼ら彼女らも私と同じように判断を下すこと、時には優れた判断さえ下すことを知りました。と同時に、重要なことは、その決定事項にこれまで以上の熱意を傾け、よりスピーディかつ積極的に実行したことです。私が養わなければならなかったのは、みんなに考えさせるための“忍耐力”だったのです」

 以上のことから、結論は明白だ。従業員はみずから意思決定を行えば、その後の一連の取り組みにいっそう献身的になる。あなたがチームに望んでほしいことをチームがみずから望めば、それが実現する可能性は5倍に膨らむのだ。


HBR.ORG原文:Increase Your Team's Motivation Five-Fold April 26, 2012

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スコット・ケラー(Scott Keller)
マッキンゼー・アンド・カンパニーのディレクター。南北アメリカで組織変革の支援を主導している。著書にBeyond Performance: How Great Organizations Build Ultimate Competitive Advantage(Wiley、2011年)がある。