では、パフォーマンスについてはどうだろう? 自分を思いやるのは心地よいかもしれないが、最終的に成功する可能性が高いのは誰かといえば、自分に厳しい人、いつもベストを目指している人のほうではないのか。

 この問いに答えるには、自分への思いやりに“該当しない”のは何かを理解することが重要だ。自分を思いやるという精神は、「一息入れる」とか「少しのんびりしよう」といった表現である程度は表すことができるが、これは「困難から逃げる」とか「ハードルを下げる」ということとはまったく違う。自らの成果に対する責任を引き受けながら、同時に自分を思いやることは可能なのだ。きわめて困難な目標に向けて奮闘しながら、同時に自分を慈しむことはできる。肝心なのはどこに最終的な目標を置くかではなく、その過程での浮き沈みをどう捉えるかなのだ。実際に研究では、自分を思いやる人のほうが目標を達成する可能性が高いことが示されている。

 ブライネスとチェンは研究で被験者に対し、挫折や失敗を、自分への思いやりの観点か、自尊心を高める観点のいずれかで捉えるよう依頼した。たとえば一部の被験者には、「自分の弱点について、思いやりと理解を持って自分に語りかけるなら、何と言いますか?」と尋ねた。

 他の被験者には、自尊心を強めることに重きを置く尋ね方をした。「自分の弱点について、むしろ自分の強みを立証するために自分自身に語りかけるなら、何と言いますか?」

 結果、自分を思いやった被験者のほうが「自分の弱点は変えることができる」と考える場合が多かった。自分への思いやりは――逃げるのとはまったく違い――実際に被験者の向上心を高め、今後は同じ過ちを繰り返さないという意欲を高めたのである。

 この意欲の高まりによって、被験者のパフォーマンスが明らかに向上した。たとえばある実験で、被験者にテストを受けさせ、落第した者には再テストで得点を上げるチャンスが与えられた。最初の失敗を自分への思いやりを持って捉えた被験者は、自尊心を高めようとした被験者と比べて25%も長い時間をかけて学習し、2回目のテストでよりよい成績を上げた。

 自分への思いやりは、なぜこのような効果を発揮するのだろうか? それは主に、「評価を伴わない」ため――換言すれば、自分のエゴが無関係となるため――欠点や短所にきちんと向き合うことができるからである。自分の能力や行動を現実的に捉え、次回は何を変えればよいかを理解できるのだ。

 一方、自尊心を守ることに注意が向いていると、自分自身を率直に見つめる余裕がなくなってしまう。改善の必要性を認識できないのだ。なぜなら、自分の弱点や短所(すなわち自尊心を脅かし、不安や鬱屈をもたらすもの)を認めることになるからだ。自分の間違いを自分でさえ認めたくないのなら、正しいやり方を学ぶことなどできるだろうか?

 あなたは必ず間違いを犯す。これは避けられない真実なのだ。誰しもが――偉大な成功者でさえ――間違いを山ほど犯している。成功へのカギは、誰でも知っているように、失敗から学び前進し続けることだ。しかし、その方法を全員が知っているわけではない。自分への思いやりこそ、あなたが探し求めてきた方法なのである。だからぜひ、一息入れてほしい。


HBR.ORG原文:To Succeed, Forget Self-Esteem September 20, 2012

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ハイディ・グラント・ハルバーソン
(Heidi Grant Halvorson)

コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。