ZARAは、ファッション性の高い商品を扱っているが、流行を作り出すというよりは、流行を素早くフォローしている。世界各地の感度の高い市場にデザイナーを配し、市場の動向を常に把握する。ものすごいアイテム数の新商品を開発・生産し、大規模流通センターを介して、短期間で世界中の店舗に運んでいる。ファッション性が高いので売れ残りのリスクが高く、在庫処分などのコストが見込まれるので、高価格をつけたいところだが、価格は低く抑えている。それができるのは、1つには、地理的に集中し、垂直統合された生産拠点において、少量生産を行っているからだ。リードタイムが短いために、比較的直近の市場動向を確認してから発注できるので、予想的中率が高いといわれている。また、少量生産・売り切れ御免なので、店舗でも希少性を演出できる。買い物客は、「店舗に行った時が並んでいる商品を買うチャンス」という雰囲気に飲まれ、値段が下がるまで待とうとはしない。それゆえ、売れ残りが少なくなるのである。

 このようなことが、ファッション性の高い商品を低価格で提供できるZARAの特徴としてしばしば指摘されるが、二兎戦略に成功するもう1つの重要な理由として考えられるのは、ZARAが商品の品質にはあまりこだわらないということである。10回程度着られればよしと考えているようである。品質の作り込み、品質向上をそれほど追求しないから、多品種、短納期を実現でき、それゆえファッション性の高い商品を扱いながら、リスクを抑えて低価格で提供できるのである。

 つまり、ZARAは、ファッション性対コストというトレードオフだけでなく、品質対コスト(あるいは品質対ファッション性)といったトレードオフにも直面していたということである。後者のトレードオフについては、品質を追求せずにもっぱらコストを追求した。品質を追求しないがゆえに、ZARAはファッション性とコストという2つの価値を同時に追求できていると考えられるのである。

 このように考えると、ユニクロも、単に一兎戦略をとっているのではないと見ることもできる。すなわち、ユニクロも、ファッション性対コストというトレードオフだけでなく、品質対コストというトレードオフにも直面している。ユニクロは、前者のトレードオフについてファッション性を追求しないがゆえに、品質とコストという2つの価値を同時に追求する二兎戦略をとることができているとも考えられるのである。