ステップ2:最も重要な変革に絞って取り組む
 我々の研究によれば、組織文化で変えるべき要素が5つ以内であれば、1年から1年半の間に改革を遂げることが可能だ。改革の項目を少数に絞れば、望ましい状態を実現するためにの最優先項目に、全従業員の努力を集中させることができる。たとえばANZの経営陣は、まず土台を築くことから始めている。つまり、方向性について合意すること、風通しのよさと誠実さの基準を設けること、説明責任に対する個々人の積極的な意識を醸成することである。1年半後、これらの文化的要素が十分に改善されたと感じた経営陣は、次の段階に進み、さらに1年半をかけてイノベーション、人材育成、顧客中心の文化の創造に取り組んだ。もしすべての課題に同時に取り組んでいたら、努力が分散されインパクトも弱まっていただろう。

ステップ3:組織文化と事業改善の取り組みを統合する
 暇を持て余している従業員はいない。したがって、組織文化のみを独立したプログラムとして実施した場合、たいていは後回しにされ失敗する。我々の観察によれば、成功する施策は事業上の取り組みにしっかり組み込まれている。これは組織文化を明確に定義できていれば簡単に行える。

 たとえばANZは、改革プログラムの開始後1年半から次の18カ月間、販売促進策の一環として、全社で営業成績の高い従業員によるピア・コーチング(部下ではなく同僚・仲間へのコーチング)を取り入れ、人材を育てる文化の構築につなげた。また、支店の終業時に行われる営業チームによるミーティングでは、数字の報告だけでなく、顧客にどう対応して関係を構築したかを個々の営業担当者に報告させた。これによって、顧客中心主義の強化という目標が強調された。各支店におけるコーチングと顧客重視の充実度は、支店長の評価項目に組み込まれた。そして営業担当者の報酬にも、販売成績だけでなくコーチングと顧客重視への姿勢が反映された。

 これら3つの手順を基に改革をうまく実行すれば、業績向上のみならず、働きがいのある職場環境を従業員に提供できる。多くの経営幹部にとって、組織文化の改革を成功に導くことはキャリアにおいて最も見返りのある仕事だ。なぜなら、すべての従業員にとって重要である人的要因を、事業上の課題に結びつける能力を獲得できるからである。


HBR.ORG原文:Three Steps to a High-Performance Culture January 26, 2012

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キャロリン・デュワー(Carolyn Dewar)
マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー。

スコット・ケラー(Scott Keller)
マッキンゼー・アンド・カンパニーのディレクター。南北アメリカで組織変革の支援を主導している。著書にBeyond Performance: How Great Organizations Build Ultimate Competitive Advantage(Wiley、2011年)がある。