――ドイツ企業の強さは「選択と集中」にあるわけですね。他にはいかがですか?

 文化の違いも大きいと思います。ドイツ人は、車で200マイルも走れば、言語、通貨、法律、社会環境、流通システムまでも異なる国に行くことができます。このようなヨーロッパで暮らす人々と日本人では、多様性に対する考え方に大きな違いがあるのは当然です。

 日本はこれまで国内市場が十分に大きかったため、海外進出は二の次でよかった。しかしドイツはヨーロッパの一国にすぎないので、成長するには国外に事業を展開する必要があることを、歴史的に認識しているのです。

 海外進出の方法も異なります。日本企業の場合、まずはアメリカから、という傾向が強いように見受けられます。これは経済のみならず、戦後の日米関係など、政治的な理由があってのことなのかもしれません。一方、ドイツの場合は国際展開の方法も多様であり、一度に複数の国々へ進出することもよくあります。150カ国と取引を行う中小企業も珍しくありません。多くの国を相手に事業を展開するには、選択と集中が、より重要となってきます。ニッチな市場に狙いを定め、卓越した技術と製品力によってマーケット・リーダーとなった企業でなければ通用しないのです。

 また、ドイツ企業にはイノベーションを重んじる文化があります。単なる技術革新ではなく、顧客ニーズに対応し、顧客に利益をもたらすという「顧客に貢献するイノベーション」であるというのが特長です。これがドイツ製造業の強さの秘訣だと思います。

 それゆえ、ドイツ製造業は製品開発のみならず、サービスにも力を入れています。カスタマー・サービスや部品交換サービスなどのアフターサービスは非常に充実しており、市場や顧客からの特別なニーズに応えてデザインするテーラーメードのカスタマー・ソリューションによって顧客ロイヤリティを高め、利益率を上げています。

 また、経営層を見ても、変革に対してオープンです。ドイツ企業は日本企業よりも、自身の製品ややり方や手段、能力を変えていくことに対して柔軟なのです。

――優秀な経営人材をどのようにして育てているのでしょうか。

 ドイツには企業規模を問わず、ファミリービジネス(同族経営)も少なくないのですが、会社を継承させる前に子弟を海外で学ばせ、海外の会社に就職させてビジネス経験を積ませてから呼び戻しています。早い段階で「ビジネスチャンスは海外にある」ことを学ばせ、国際的なビジネスがどのようなものかを理解させるのです。海外に暮らした経験があれば、その国の顧客にどうしたら満足してもらえるかを、自然と考えるようになります。

 日本企業の場合は、やはり国内市場を優先させてきたこと、そして中小企業は系列システムによってネットワークの外との接点が少なかったことなどが、経営人材の育成上、ネックになっていると思います。

(つづく)

*後編は5月9日公開予定

 

ローランド・ベルガー・ストラテジー・コンサルタンツ
ドイツ・ミュンヘンに本社を置く、ヨーロッパを代表する経営戦略コンサルティング・ファーム。1967年設立。現在、36ヶ国、51オフィス、2,700名のスタッフを擁する、世界でトップ5に入るグローバル・ファーム。
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