●明確さ(Clarity)
 それらの企業のリーダーたちは、どのような文化を構築したいか、そしてそれが業績目標の達成にいかに重要となるかをはっきりと認識している。ザッポスのCEOトニー・シェイは、従業員の謙虚さと人間らしさが同社のサービス力のカギとなることを理解していた。それを「ザッポス・ファミリー・バリュー」という企業理念の10カ条に表し、組織づくりの核とした。これらは同社の採用、戦略、成長に関する難しい意思決定を導く、実効性のある強力な理念となっている。

●浸透(Communication)
 よく知られた話だが、デイビッド・ニールマンはジェットブルー航空を創業した当時、月に1度クルーとして搭乗していた。エプロンをつけ、自己紹介しながら乗客にコーヒーを注いで回った。この行動は乗客を驚かせ感動させただけでなく、組織全体の話題になった。すべての従業員がジェットブルーの顧客に奉仕しなければならないことを、ニールマンは身をもって示したのだ。我々が調査したどの企業も、これと同じような方策を取っている。組織の核となる理念をことあるごとに従業員に知らしめ、特に人々が耳を傾けやすい機会――採用時やオリエンテーション、または危機に直面している時など――にはそうしたメッセージを強調していた。

●一貫性(Consistency)
 これらの企業は文化の「ほころび」、つまり組織の行動様式と望ましい文化との間に生じた齟齬を、素早く取り除いている。米ルイジアナ州の大手医療機関オクスナー・ヘルスシステムが行ったサービス向上の取り組みが、その好例だ。どのスタッフも急ぎの重要な仕事を抱えている同病院では、一刻を争う緊迫した空気が漂い、それがサービス面での障壁となっていた。そこで同病院のCEOミッチ・ワズデンは、「5/10ルール」を設けた。自分の半径10フィート(約3メートル)以内に近づいた人には目を合わせ笑顔を返すこと、5フィート以内にいる人には声をかけること、というものだ。以降従業員たちは、一瞬立ち止まって周囲の人々の人間らしさを感じることが仕事の一部となり、同社のサービス文化が様変わりした。

 この最後の事例を、我々は特に気に入っている。なぜなら、組織文化とは固定的で不可解なもの、リーダーはそれを気に入らなくても否応なく受け入れざるをえないもの、という見方を打ち消してくれるからだ。実際、文化とは組織の他の側面と同様に、設計・構築し育てていくものなのだ。

 あなたの組織で文化を最も大きく変えたものは、何だろうか。優れた文化を築くために、リーダーはどんな方法を取れるとお考えだろうか。


HBR.ORG原文:Culture Takes Over When the CEO Leaves the Room May 10, 2012

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フランシス・フライ(Frances Frei)
ハーバード・ビジネススクールのUPS寄付講座教授。サービス・マネジメントを担当。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(アン・モリスとの共著、日経BP社)がある。

アン・モリス(Anne Morriss)
コンサイア・リーダーシップ・インスティテュートのマネージング・ディレクター。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(フランシス・フライとの共著、日経BP社)がある。