銀行にとってのリスクは、新規参入者によって企業のバックオフィス業務の支援という限られた役割に追いやられ、一方でノンバンクが顧客の財布を管理する新たな役割を担うようになることだ。ザ・バンコープ などのプライベート・レーベル銀行(パートナー企業のために銀行サービスの開発を行う銀行)の台頭は、規制による障壁が見かけよりも低いことを示している。というのは、ザ・バンコープが提携・支援する相手はシンプルやムーブン(Moven)などの新興企業(ともにオンラインの銀行サービスを提供)から、Tモバイルやグーグルなどの大手まで幅広く含まれるからだ。

既存の銀行は、単に「デジタル化を進める」だけではこうした脅威に対抗できない。つまり、支店を閉鎖し、モバイルやオンラインのサービスを改善するだけでは不十分なのだ。グーグルやペイパルに代表される世界中の競合から自社の縄張りを守るためには、顧客の消費生活にもっと入り込まなければならない。金融取引の瞬間だけでなく、その前後においてもより大きな役割を担うことを学ぶ必要があるのだ。

 銀行はデジタルの世界においても、独自の競争優位を備えている。大きな顧客基盤、顧客と決済に関する大量のデータ、決済を支援する能力、安全管理、融資能力などである。どれも模倣が困難なものだ。

 銀行は単に預金と支払いを助けるだけでなく、その巨大な決済データを新たなデジタルツールと結びつけることで、顧客の購入意思決定に力を貸すことができる。それが夕食であれ、映画や新しい家であれ、何をどこで、いつ買うかの判断を手伝うのだ。世界の賢明な銀行は、すでにその取り組みを始めている。

●トルコの大手銀行の1つであるガランティは無料のモバイル・アプリを提供し、顧客の位置情報と過去の決済情報を基にして、個々の顧客に応じた特典やアドバイスを提供している。GPSとフォースクエアを利用して特別サービス中の店の近くにいることを知らせたり、貯金の提案をしたり、過去の支出に基づいて今月口座にいくら残りそうかを予測して教えたりする。

バンク・オブ・アメリカは決済データを分析して、顧客が頻繁に利用する店舗での購入に対してキャッシュバックを提供している。オンラインの口座明細書で、その店での前回の決済の下に表示されるボタンをクリックすれば、次にその店で購入した時に現金が自動的に銀行口座にバックされるという仕組みだ。同行はこれまでに1700万ドルのキャッシュバックを提供した。これには金融系IT企業であるカードリティックスの技術が使われている。

オーストラリア・コモンウェルス銀行は、住宅購入に役立つようにとAR(拡張現実)の技術を用いたモバイル・アプリを提供している。家を探している人が住宅にスマートフォンのカメラを向けると、その住宅についての詳細な情報が示され、住宅ローンと保険料の月々の支払予想額も表示される。このアプリはオーストラリアの全住宅の95%をカバーし、1週間に2万件の情報検索が行われている。

ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)はアメリカで、自動車の価格情報サイトであるトゥルーカー(TrueCar)と提携し、顧客に自動車の(定価ではなく)実勢価格に関する情報を提供している。これにより、顧客は価格交渉で優位に立てるようになり、同時に同行は自動車ローンと保険の販促も行える。BBVAのイノベーション研究室は、他の国々でこの事業をもう一歩進めることを構想している。こうしたデータで武装した自動車専門家を派遣し、顧客に代わって直接交渉を行わせようというのだ。

 業界間の境界線があらゆる部分で曖昧になっていくにつれ、金融サービスは顧客にとって新たな意味を持つようになる。その変化は急速に進むだろう。収益力のある業界となるためには、銀行は口座や資金の提供に依存していてはいけない。顧客が日々の生活で、お金をよりうまく管理し節約できるようにする――その役に立つサービスを提供できるかどうかに、銀行業界の将来がかかっている。


HBR.ORG原文:Banks’ New Competitors: Starbucks, Google, and Alibaba February 20, 2014

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ウェイン・ブッシュ(Wayne Busch)
アクセンチュアのマネージング・ディレクター。北米の銀行プラクティスを担当。

 

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アクセンチュアのシニア・マネージング・ディレクター。グローバルの銀行プラクティスを担当。