2.華々しい成功を遂げてきた老舗企業が苦境に立てば、過去の栄光は呪いにも遺産にもなる。したがって変革の第2の原則は、過去を否定せずに、過去から脱却すること。心理学者のジェローム・ブルーナーは、エッセイ集『心を探して―ブルーナー自伝』(邦訳1993年、みすず書房)において、古くて優れたものがいかに新しい発見につながるかを簡潔に述べている。独創力の真髄は、「従来の考えを超越するために、すでに知っていることをいかに活用するか」であるという。私が出会った傑出したリーダーたちは、決して過去には背を向けない。すでにあるものを再解釈することで、やがて来るものを見極める。

3.変革の担い手の仕事は、高尚なアイデアを発表して終わりではない。組織内外で切迫感を醸成し、それを行動へと変えることだ。新たな視点で展望を描くことは、リーダーの1つの仕事だ。一方で、従業員たちの意欲を駆り立て、魅力的な展望を抜本的な変化をもたらすパフォーマンスに変えることはまた別の仕事である。友人でファストカンパニーの共同創刊者であるアラン・ウェバーは、進歩は数式で表せると言う。変革が実行されるのは、「現状維持のコストが、変革のリスクよりも大きい」時だけだ。したがって変革の第3の原則は、リーダーが現状への不満を奨励すること。いつも通りのやり方は、破壊の嵐から逃れる安全な港ではなく、究極のリスクである――このことを人々に納得させなくてはならない。

4.経営トップは1人でも務まるかもしれないが、変革は1人ではうまくいかない。昨今では、最も強力な貢献は、最も予期せぬ場所からもたらされる。社内の「隠れた天才」や、顧客やサプライヤーといった周囲の賢者たちの「集合知」などだ。したがって変革の第4の原則は、リーダーが謙虚な野心を持つこと。大きな問題に取り組むだけの野心(ambition)と、自分が答えを持っていないことを知る謙虚さ(humility)を兼ね備えた、ハンビション(humbition)が必要だ。変革では、1人の知恵は多数の知恵には及ばない。

5.変革とは破壊であると同時に、一貫性も要するものだ。評論家は、変革の勇気を持たない企業を酷評する。しかし多くの企業にとって、実は「変えてばかりいる」ことが問題なのだ。コンサルティング会社を取っ替え引っ替えし、マネジメントの最新の流行を追う。多くのことを始終変えていると、結局は同じ状態にとどまることになるのだ。ジム・コリンズはこれを指摘して言う――「凡庸さの特徴は、変わろうとしないことではなく、常に一貫性が欠如していることだ」。これは、第5の原則につながる。リーダーとして抜本的な変化を望むなら、景気や業績がどうであれ、常に一貫した優先順位と慣行を保つこと

 長い伝統を持つ企業ほど、抜本的な変革は難しい。いまの時代を生きるあなたが、それをうまく成し遂げることを祈りたい。そして20年後には、ボリッシュの「私たちが変われない50の理由」が、今日よりも的外れなものになっていてほしいと思う。


HBR.ORG原文:The More Things Change, the More Our Objections to Change Stay the Same September 4, 2013

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ウィリアム・テイラー(William C. Taylor)
『ファストカンパニー』誌の共同創刊者。最新刊は『オンリーワン差別化戦略』(ダイヤモンド社)。既刊邦訳に『マーベリック・カンパニー 常識の壁を打ち破った超優良企業』(日本経済新聞出版社)がある。