ところが、営業部門にヒアリングすると「コンセプトはいいが、他社商品との競争が激化しているため、もっとユニークな新機能がないとバイヤーを説得しにくい」という意見でした。家電量販店のバイヤーに直接対面する彼らが、自信を持って売りたいと思うものでなければ、売れる「店頭」をつくることはできません。製造開始のタイミングを間近に控えた時期ではありますが、これはとても重要な意見でした。

藤田 康人
(ふじた・やすと)

株式会社インテグレート代表取締役CEO
味の素株式会社を経て、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)の設立に参画。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年、IMC(統合型マーケティング)プランニングを実践するマーケティングエージェンシー 株式会社インテグレートを設立。4冊目の著書『THE REAL MARKETING .F N/売れ続ける仕組みの本質』(宣伝会議)を発刊。

 これを受け、なんとか機能性を高めることができないか、研究・製造部門等へ相談をしました。すると、製造部門から、ある突破口が見つかったのです。「最近提案を受けた新素材を使ってこのパーツを着脱しやすくすれば、とても簡単に手入れができるようになるかもしれない」というアイデアでした。確かに、ジューサーについての消費者インタビューでは、「手入れの煩わしさがハードルとなり、使わなくなってしまう」という声が多くありました。健康を意識したいのであれば、ジューサーを使い「続ける」ことが必要なのです。「手軽さ」を強くアピールできれば、ヘルシー志向の人に対しての訴求力も高まるというわけです。また、この素材に対応するラインもなんとか調整できそうだ、とのことでした。

 このケースでは結果的に、このアイデアを採用し、コンセプトに合った魅力的な商品を発表することができました。これは理想例ではありますが、このような打開策に至ることができたのは、偶然ではなく「仕組み」があったからです。

 それは、商品開発において早い段階からプロセスを共有する社内体制としての「仕組み」です。もちろんプロセスすべてを共有する必要はありません。大事なのは商品のコンセプトであり、商品を通じてどんな「価値」を届けたいのかというところです。プロセスを共有できていたからこそ、社外の重要なステークホルダーである流通(家電量販店)と対峙する営業部門とも本音で議論を交わし、商品の提供価値を高めることができました。

 プロダクトが完成し、マーケティング戦略が決定した段階から営業部門へ販促プランを相談に行っても、「こんな商品は売れないだろう」と思われた瞬間、うまくはいきません。営業部門やその先にいる流通業者のインサイトを踏まえて、チューニングしていくことで、スムーズにマーケティングプランを実行することができます。