第1段階:否定
 はじめは真剣に取り合わず、軽いおしゃべりのなかで触れる程度にすぎない。集中型の参入者は多くが小規模で、特定の部分で恥知らずなほど未熟なことがままある。彼らは「賢く手抜きをする」ことを選んでも、失うものは何もない。したがって既存プレーヤーは、最初のうちは新規参入者を軽視する。「サウスウエスト航空? 食事も出さないし! 搭乗口はバス乗り場みたいに騒然としてるよ」「ダートイットアップなんてまだ社員もいないでしょう!」

第2段階:怒り
 上客を奪われると、否定は怒りに取って代わる。大手リテール銀行からコマース・バンク(現TD銀行)に乗り換えた顧客には、あるはっきりとした傾向があった。低金利を我慢することと引き替えに、利用時間の利便性や親切なサービスを求めたのだ。言い換えれば、彼らは価格に敏感ではなかった。そして低価格志向ではない顧客ほど、儲けをもたらしてくれる場合が多い。これはマーケットリーダーにとって昔からの課題である――上客ほど離れるのも早い。

第3段階:正当化
 競争に関する認識が、妄想に陥る段階だ。自分やステークホルダーにとっての脅威を、どうにかして和らげようとする。「たしかに顧客を一部奪われたが、他の顧客は皆残っているではないか」。ここで多くの企業は外部のコンサルタントを呼び入れ、自分たちの認識を正当化する。1つの小さい市場で後れを取っているにすぎないことを、確認するためだ。

第4段階:絶望
 ここでしぶしぶながらも、不安を認める。コマース・バンク以外にも、利便性で対抗する敵がレーダーに出現している。業界で1、2を争う普通預金金利を提供するネット銀行のINGダイレクトなどだ。もしあなたの会社が成功と脆弱さの両方を特徴としている場合――つまり収益を上げているが、優良な顧客セグメントの期待に応えていないなら――新たな競合たちに相次いで直面することになるかもしれない。

第5段階:受容
 この段階で経営陣は脅威をしっかり受け止め、戦略的な対応を始める。事業のあり方を見直し、新たな競争環境で勝ち抜くビジネスモデルを再構築する。社員に創造性を発揮させ、優良顧客に耳を傾ける。ここまで来るのに苦痛は伴うが、迅速に実現できる場合もある。現実と前向きに向き合おうという覚悟さえ持てばいい。

 あなた自身やあなたの会社が、これらの段階のどれかに当てはまったことはないだろうか。社員が現実を見つめるようになり、組織が第5段階に進むためには何ができるだろうか。


HBR.ORG原文:The Five Stages of Strategic Grief March 2, 2012

■こちらの記事もおすすめします
戦略のイノベーション(その2) 認知された非合理
テクノロジー企業とショウジョウバエの共通点
大企業の強みを活かし、イノベーションを実現する方法
戦略論で観る、アップルの命運
ドイツ経済を支える、集中特化型の中小企業
980円の受験サプリは破壊的イノベーションとなるか

フランシス・フライ(Frances Frei)
ハーバード・ビジネススクールのUPS寄付講座教授。サービス・マネジメントを担当。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(アン・モリスとの共著、日経BP社)がある。

アン・モリス(Anne Morriss)
コンサイア・リーダーシップ・インスティテュートのマネージング・ディレクター。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(フランシス・フライとの共著、日経BP社)がある。