イノベーションはアナリティクスから生まれるか

――2割から得たインサイトについて、考えるよりも実行して検証した方が早いと思う企業もあるのではないでしょうか。

 それはあるでしょうね。そして結局、コストばかりかかってしまうことも起こりうるでしょう。そこにリアルとネットの差があります。ネット企業はそうしたコストというのが非常に低く抑えられ、A/Bテストも簡単にできます。リアル小売は在庫リスクを抱えることになりますから、しっかり検証を行い、もう少しゆっくりしたペースでやらざるを得ません。そこが競争上不利になる点でもあります。

――ネット企業の優位性はまだ続くでしょうか。

 まだ続くと思いますが、少しずつリアルとネットの融合も進んでいます。たとえばネットスーパーでは、クリック・アンド・コレクトというサービスが人気で、利用者の25%程度はネットで注文したものを、自分の好きな時間にスーパーに受け取りに行くのです。生鮮食品などはその方が安心ですし、ビジネス・パーソンにとってはとても便利です。いまはそのような電子発注システム(EOS)がどんどん増えてきています。
 イギリスのジョン・ルイスという百貨店は、在庫をほとんど抱えずに店舗の延べ面積を半分にする代わりに、タブレットを多く配置する実験店舗をつくりました。店舗でモノを見て、気に入った商品をタブレットから注文すると翌日届くという仕組みです。業界全体として、在庫リスクや品ぞろえの問題を解消する手法が生まれてきています。
 アマゾンは逆にリアルとの融合として、アメリカでロッカーサービスを始めました。アマゾン・ロッカーという設備を設けることで、商品の受け取り場所を増やしたのです。返品もアマゾン・ロッカーを通してできるのですが、非常に好評です。メガネ販売のウォービー・パーカーや紳士服のボノボスといった企業も、リアルとの融合に乗り出しています。
 こうした傾向はこれからも続くでしょう。

――ビッグデータの活用がこれからますます活発になったとして、イノベーティブな商品はアナリティクスから生まれてくるものでしょうか。

 ビッグデータは万能ではありません。やはりそこにはイノベーションのプロセスが必要になります。定量情報と定性情報を組み合わせたり、より詳細なデータを得ることで、イノベーティブな商品が生まれる確率は上がると思いますが、データだけから素晴らしい商品が生まれるというものでもないと思います。
 ビッグデータという言葉に踊らされず、一歩ずつ着実によくしていく。それがアナリティクスに必要な姿勢ではないでしょうか。(了)