経営のコア・プロセスにアナリティクスを組み込むことが重要である

――本誌最新号のインタビューにおいて、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、「データの分析結果と自分の感覚に食い違いがあった場合、自分の仮説のどこが間違っていたかを考え直す」と語られました。データと直感、どちらを重視すればよいのでしょうか。

 そうした反証検証を経営に取り込むのは非常に大事なことです。すなわち経営のコア・プロセスにアナリティクスを取り込み、PDCAサイクルに乗せていると言えます。普通の経営者は、データと直感であれば直感を選択してしまいます。経営者でなくても、そういう傾向はよく見られます。
 たとえば、マーケティング分析を行った結果、自分のやろうと思っていた方向と違う結果が出てきたとします。そうすると、データのなかから、ある切り口で自分がやろうとしていることに一致するセグメントを探し出そうとするのです。「全体としては違う方向性かもしれないが、一部分を切り出すと方向性は一致するので、そのセグメントを狙います」といったようなケースですね。こうしたケースというのは、どのタイミングでデータを使い、どういった判断するかという設計がないために生じるのです。

――データを無視して直感に頼る問題がある一方、理由はわからないがデータに従うという行動も問題ではないでしょうか。

 それも問題ですね。まったく直感に反するような分析結果が生まれたら、まず疑ってかかるべきです。データそのものや分析手法に誤りがないかを精査すると、実は8割くらいはデータに誤りが発見されます。そこで分析をやり直すと直感に合う結果が得られるケースも多いのです。
 ただ、残りの2割は本当にデータが正しく、そこに驚くべきインサイトが秘められていることがあります。重要なのは、そのインサイトについて、なぜそのような結果になっているのか、そのメカニズムを解明することです。現象面だけ捉えると、打った手が根本的な理由と合致しないこともあるためです。直感と反するのは、そこに自分には見えていない消費者心理や市場心理、構造変化などがあるからです。それを突き止めることができれば、戦略的優位性を築くことができるはずです。
 たとえばアマゾンのサービスで、アマゾン・プライムというのがありますが、立ち上げた時は大赤字でした。ヘビーユーザーの送料無料化による単純なコスト増です。普通の経営者ならここで中止しますが、彼らはじっと耐えました。プロモーションを繰り返すうち、そこそこ利用する顧客の一部の取引量が飛躍的に増え、黒字化に成功したのです。そうしたスイートスポットの存在を知っていたため、当初の赤字にもうろたえなかったのです。これは、全体の平均やロイヤルティの高い先だけに焦点を当てていては見逃してしまったセグメントでしょう。