他社の協力を仰ぐこともできる

 これまで紹介してきたように、アナリティクス組織の立ち上げには、多くの時間、労力を費やす必要がある。資本力のある企業だとしても、一朝一夕に実現することは難しいだろう。そのため、アナリティクスにおいても、その他業務と同様に外部企業の力を借りることも答えになる場合があるだろう。以下は、アナリティクス分野において外部企業を活用する場合の一般的なパターンである。

①外部委託型(既に市場にサービスがある場合、人材確保から始める場合)
 アナリティクス業務の垂直立上げが可能となる。自社にアナリティクスを行うリソース(人・基盤)がない、あるいは同じ予算と時間をかけるなら、プロに頼んだほうが、高いパフォーマンスがあらかじめ保証されて効率的、と考える企業が選ぶ傾向がある。

②アドバイザー型(新たに組織を立ち上げる場合、新しい技術領域に踏み込む場合)
 On the Job Training形式で、業務や基盤のノウハウを得た人材の育成が期待できる。外部企業からデータ分析に関する実務全般を「コーチ」や「家庭教師」のような形態で支援してもらう型だ。必要に応じて統計学の基礎講習から始まることもある。データ分析の知見とノウハウを外部企業から自社に蓄積させていくことで、データ分析チームの内製化を進めたい企業が選ぶ傾向がある。

③技術利用型(先端技術/基盤を利用する場合)
 先端技術を利用し、差別化を図るにあたり、当該技術の「ピース」を短期間で獲得し、事業として立ち上げるケースのことである。こうした場合においては、買収や提携、共同研究などを通した外部からの技術獲得が特効薬になる。例えば、近年RTB(Real-Time Bidding)やDMP(Digital Management Platform)といったアナリティクス技術が注目されている広告配信における、KDDIグループによるノボットやスケールアウトの買収は好例だろう。KDDIグループが持つ巨大なユーザー情報を、スケールアウトが得意とするDMP技術で解析、活用することで、短期間のうちにユーザーにとって価値ある広告が提供されることになるだろう。

 しかしながら、多くのアウトソースと同様に、上記いずれの場合においても、委託先の企業と自社との明快な役割分担を定めることが極めて重要だ。これをきちんと定められないと、従来のITや業務のアウトソースにおける失敗事例のように、業務自体がブラックボックス化して自社にナレッジやスキルが蓄積されないといったケースが起こりうる。
 このような事態を回避するためには、アナリティクスを活用した事業のビジョンを描く必要がある。ビジョンに基づき必要な技術を明らかにし、今現在での役割分担、外部業者から自社への業務移管の流れをあらかじめ考えなくてはならない。

最終回では、この「将来ビジョン」を策定する企業に向けて、アクセンチュアの考えるアナリティクスを利用した将来のビジネスの姿を解説していく。(続く)

工藤 卓哉(くどう・たくや)
アクセンチュア株式会社 アクセンチュア アナリティクス日本統括 マネジング・ディレクター。
慶應義塾大学商学部卒業後、アクセンチュア入社。経営コンサルタントとして事業戦略等の策定に従事した後、公共政策を学ぶため、退職留学。コロンビア大学 で環境科学政策を研究し修士号を取得。カーネギーメロン大学情報工学修士号取得。ブルームバーグ市長政権下のニューヨーク市で統計ディレクター職を歴任。 11年に帰国し、アクセンチュアに復帰。13年6月より現職。著書に『データサイエンス超入門〜ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方』(共著、日経BP社、2013年)、『これからデータ分析を始めたい人のための本』(PHP研究所、2013年)がある。慶應義塾大学SFCデータビジネス創造ラボ上席所員・データサイエンス講師、会津大学 ソーシャルサイエンスプログラム客員教授。

 

今井 俊一郎(いまい・しゅんいちろう)
アクセンチュア株式会社 アクセンチュア アナリティクス シニア・マネジャー。
東京大学大学院 農学生命科学研究科生物材料化学修士課程修了の後、アクセンチュア入社。
素材・エネルギー産業を中心に、プライシングや、グローバルサプライチェーン、経営管理等の企業の保有するデータを利活用した改革活動を多数経験。直近では、エネルギー業界の規制緩和に伴いアクセンチュアの立ち上げたAccenture Energy Platform Servicesのサービス開発を担当。会津大学 ソーシャルサイエンスプログラム客員准教授。