成功した組織に共通する4つの特徴

  アナリティクスの導入に成功した企業では、組織・運営体制に特徴がある。「成果につながる仮説を立案」し、「仮説検証を回す」とともに「最先端技術を試す」ことができる環境を構築し、「成果に繋げる組織・運営体制」を構築しているのである(【図1】参照)。

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【図1】アナリティクス導入に成功した企業の組織・運営体制

これらのポイントを、以下順を追って説明していく。

①成果創出につながる仮説
 前述したように、成功企業では効果創出につながる実践的な取組を進めているが、効果創出につながる取り組みを行うためには、事業の特徴、悩みを理解し、アナリティクスを用いた事業プランを立てることが必要になる。
 アクセンチュアが取り組んだ事例では、株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレスと共同で、公衆Wi-Fiから得られる位置情報データと、ビッグデータ分析技術を組み合わせたサービス基盤を提供している。例えば、フランチャイズ展開している企業で、ある特定の店舗周辺の時間別アクセスログ数が高いにもかかわらず、閉店している加盟店があれば売上機会を喪失しているという仮説を立て、データを検証し、営業した場合のビジネスケースを考えることで、効果につながる取り組みとすることができるのだ。まさに翌日にはやろうと思えばアクションにつながるのである。現場が数字を見て、解釈の為に頭を悩ます必要はない。先述のハマーバッカー氏の言葉を地で行く好例だ。

②仮説を検証できる環境
 成功企業は立案した仮説の検証を行うことで、仮説を再構築する仮説検証のサイクルを構築している。仮説検証を行うことで、事業化のスピードを加速することができるのだ。さらに、現時点では足りない情報を見極め、情報を収集するための業務/手法の確立に繋ぐこともできる。
 例えば、リクルートが提供する住宅情報サイト「SUUMO」では、顧客毎に異なる検討確度やニーズに合わせた物件情報の提供サービスをわずか2-3年で立ち上げた。[ZDnet Japan, 2013/04] 情報の不完全性をある程度のレベルで許容し、まずは仮説レベルでサービスを提供し、サービスの改善を続けたことが成功の要因と考えられるだろう。冒頭でも述べたが、まずは手元の情報を用いて仮説検証を行うことが極めて重要になる。

③新たなテクノロジーへの挑戦
 技術の進歩が激しいアナリティクスの分野では、一見事業での適用が難しそう、あるいは現在は保有していない分析技術や情報を利用するものもある。このような場合においては、失敗のリスクを恐れず新たなテーマに挑むことができる環境を整えることが必要だ。
 GoogleやAmazonのように、様々な先進技術やサービスを展開する企業では、自社の研究開発機関を用いることもできるが、多くのケースでは、先端の技術を持つ大学などの研究機関との共同研究を行うことが有効と考えられる。
 例えば、ソフトバンクは東京理科大と、筆者たちが率いるアクセンチュア アナリティクスはMIT、東京大学、慶応大学との共同研究プログラムを行っている。こうした研究機関との共同研究では、民間企業がビジネス側面での成果を追及することで、マネタイズを考えた取り組みとすることが成功のカギになるであろう。

④成果につなげる組織・運営体制
 そして、上記3つのポイントを実践した結果を成果につなげるための運営体制や評価制度を持っていることが最大の特徴だ。
 例えば、大阪ガスのビジネスアナリシスセンターでは、自社研究所の分析担当などを結集し、独立採算制のアナリティクス専門組織を有している。分析担当は、各事業部門にビッグデータを活用した事業や業務改善を提案、他部門から分析依頼を受けサービス料を得ているのだ。分析担当者自身が自分で生み出した成果を把握できることで、さらなる改善策の提案につながっている。結果的に年間約100件の分析ソリューションの提供につながっているという事実は、組織が企業に受け入れられていることに他ならない。
 何も考えずに分析するのと、結果が出なければお金ができないこのようなケースとでは、その作業の重み自体が変わるだろう。アナリティクス組織を運営するうえで、社内での位置づけ、立ち回り方を考慮することも忘れてはならない(【図2】参照)。

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【図2】アナリティクス組織の位置づけ

 スムーズにアナリティクス組織を立ち上げ、定着させるためには、いわゆる組織論に従い、事業戦略や風土を考慮した組織とする必要がある。コンサルティング型の大阪ガスの運営形態は成功事例の一角に過ぎない。ただし、成功企業の組織形態はいずれも、何らかの形で人材・知見を集約していることを忘れてはならない。技術進歩が著しく、人材もノウハウも不足しがちなアナリティクスという領域においては、社内の知見を集約することこそが他社との差別化を生み、競争優位に立つためのカギなのだ。

 こうした成功事例に加えて、日本においては「データ・サイエンティスト」の地位の確保というポイントも押さえるべきだろう。ビジネス、技術両面に精通した優秀なアナリティクス人材を育成していくためには、キャリアパスや人事制度を見直し、彼らを一つの魅力的な労働市場の人材として、社会全体がモチベートすることが極めて重要になるだろう。