Socialの基

 CARE(慈しみ)回路は、母親が子に授乳し、撫育するときに、ポジティヴな感情をもたらす回路である。生命の危険をもたらす出産と、その後の子育ての大きな負担に耐え得るように、心を落ち着かせ、自信を与える複数のホルモンを、必要なタイミングで分泌する。この回路を人工的に興奮させると、ラットは子どものために巣を整え、妊娠したことのないラットでさえも、ケージにいる他のラットの子どもたちを、急いでかき集め始める。

小栁 祐輔
(こやなぎ・ゆうすけ)

博報堂コンサルティング コンサルタント
東京大学経済学部卒業。同大大学院経済学研究科修了。(修士論文指導教官:岩井克人教授) 大学院修了後、Credit Suisse証券投資銀行部門入社。その後、PEファンドにて、投資先企業の取締役としてバリューアップ業務に従事。米系戦略コンサルティングファームMonitor Groupを経て現職。

 GRIEF(寂しさ)回路は、CARE回路の裏返しともいえる回路である。子どもが親から離れた際に、強力なネガティヴな感情をもたらし、親を呼ぶ独特の声を上げさせる(”Desperation Call”)。そして、親や群れと再会した際には、脳内麻薬を分泌し、この感情を鎮める。この回路が興奮した状態が続くと(親から十分な撫育を受けない場合、愛した人が死んだ場合、集団から爪弾きにあった場合)、鬱病の引き金となる。

 人間が麻薬に中毒性を持つのも、この回路が脳内麻薬を受容する機能を持つことが一因であるとされる。集団から疎外を感じているものが、覚醒剤に手を出しやすいのは、GRIEF回路の興奮から来るネガティヴな感情を和らげるために、脳内麻薬の代替を探す結果である。

 GRIEF回路は、未熟に生まれ、保育が必要とされる哺乳類の生存上、極めて重要な回路である。そのため、大人になった後でも、その回路を刺激すれば、強い感情をもたらし続ける。したがって、熱狂を生むSEEKING回路と共に、ビジネス上のヒントに富む回路である。社会の変化により、この回路が興奮している場面が生まれていないか。もし、そうであるならば、それを和らげる商品があれば、強く欲される。

 PLAY(遊ぶ楽しさ)回路は、笑いとポジティヴな感情を生み出す回路である。若い個体同士が同じゲージに入れられた場合、笑い声をあげながら遊び始める(YouTube参照)。むしろ遊ぶことを我慢することは出来ない。他の個体との関係性など、集団生活を行うための訓練を促す回路である。既にADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもの治療に、この回路の研究成果が活用されている。

 節を改めて、的の中心、熱狂(マニア)を生むSEEKING回路に移る。ここを刺激することが出来れば、消費者の頭の中の戦いに、勝ちを収めることが出来る。