7つの感情回路

 パンクセップ教授の7つの感情回路とは、SEEKING(ワクワク)、RAGE(怒り)、FEAR(恐怖)、LUST(性欲)、CARE(慈しみ)、GRIEF(寂しさ)、PLAY(遊ぶ楽しさ)である(注1)

 脳は進化の過程を、その位置に残している。地層と同じく、奥にあればあるほど古い部分である。「7つの感情回路」は、頭蓋の奥深く、古代の脳と呼ばれる部分に存する。その中でも、より古いものが、RAGE(怒り)、FEAR(恐怖)、LUST(性欲)である。

 回路(circuit)の名が大文字であるのは、日常的に使う意味ではなく、回路の名であることを示す。それぞれの回路は独立してはいるが、互いに情報のやり取りで結びついている。また、すべての回路と結びつき、その機能をサポートするSEEKING回路は、最も古い回路の1つであるが、熱狂をもたらす最も重要な回路であり、節を改めて詳述する。

 RAGE(怒り)回路は、FEAR回路と共に、最も古い感情回路である。そして、最初に動物実験によって発見された回路でもある。自律神経の分野でノーベル賞を受賞したヴォルター・ヘスがラットの実験中に、その脳の一部に電気を流すことで、強い怒りに似た反応を示すことを発見した(彼は晩年までそれを怒りという感情だとは認めなかった)。他の個体に食べ物などを奪われた際に興奮し、強いネガティヴな感情と、暴力的な行動をとらせる回路である。

 FEAR(恐怖)回路は、自分が食べ物として食われることを回避するための回路である。外敵の情報に接すると、強いネガティヴな感情、恐怖を感じる。同時に、身を硬直させる。音を消し、外敵の接近を避けるためである。さらに恐怖が高まると、逃げるために心拍数を上げ、実際に跳び上がって逃げさせる。

 LUST(性欲)は、異性への性的な欲望を司る回路で、ポジティヴな感情を伴う。さまざまなホルモンが情報の伝達を行う。目の前の個体の生存ではなく、種としての継続をもたらす回路である。性差が大きく、特にどちらかの性を対象にした商品ならば、この回路への理解が必要となる。

 この3つとSEEKING回路が、哺乳類より前時代の動物である爬虫類などの脊椎動物とも共有する古い感情回路である。次に、哺乳類と鳥類に見られる、より新しい回路を見よう。人間の「社会性の基」となる回路である。人間は生物学上も、社会的な生き物である。