消費者の「意識」と「行動」のギャップ

 モノが売れない時代に消費者の心を動かすには、「認知から購買に至るまでのプロセス=カスタマージャーニー」の把握が欠かせません。カスタマージャーニーとは、消費者が該当商品とどのような接点を持ち、どのような体験をするのかを探りながら、認知から購買に至るまでの行動プロセスを可視化し整理していくことです。正確なカスタマージャーニーマップを描くためには、消費者が自分でも明確には意識できていない、潜在意識として心の深層に存在する〝欲求・願望〞を探ることが必要です。

 ここで注意しなければならないのは、消費者の「意識」と「行動」には、しばしば大きなギャップがあるということです。日々あふれるほどの情報と接することで、消費者は強力な情報バリアを張り、自分とは関係のない情報をスルーするようになっています。この10年で、消費可能な情報と、選択可能な情報の差は数十倍〜数百倍に膨れ上がっていると言われています。

 調査上はとても購入意向が高いのに、実際にはまったく売れていない(=行動がおこっていない)事例は数多くあります。インタビュー調査では「買う」と答えているのに、その人が購入しないのはなぜでしょうか。

「入れ歯洗浄剤」の事例でお話しましょう。ターゲットに対して、「この商品はいかにニオイを落すか」という情報を伝えると、購入意向は高まるのですが、実際に購入には至りませんでした。そこで、「入れ歯洗浄のケアは、みんながやっていることです」という情報を伝えると、購入するようになったのです。「みんなと同じケアをやっていないと恥ずかしい」というインサイト、ここが態度変容のポイントでした。

 このケースでは、消費者にとってプラスの情報(入れ歯のニオイがなくなり、とてもキレイになる)により、その商品の良さを理解するのですが、それだけでは購買には至らず、マイナスをゼロにする情報(これを使えば、みんなと同じ入れ歯ケアができる)を伝えることで、購買行動につながりました。

 つまり、消費者が「理解する」(論理)のパスと、「行動が起こる」(感情)のパスは、得てして同じではなく、その両方をクリアしなければならないのです。