誰がマーケティングにイノベーションを起こすか

 私は、コトラー教授の提唱する6つの役割のなかでも特にActivators=イノベーションの音頭取りの役割に着目しています。Activatorとは活性化因子、活性化剤の意味としてよく使われます。

 マーケティング・イノベーションを生み出す活性化因子とは何でしょうか?

 ハーバードビジネススクールのヤンミ・ムン教授は著書『ビジネスで一番、大切なこと』(ダイヤモンド社刊)で「マーケティングは企業の機能の中で唯一、ビジネスと人が出会う場として企画された機能」だと述べています。

 Activatorとは、“ビジネスと人が出会う場”を創出し、維持発展させていくものであり、本論のテーマである、売れ続ける「仕組み」を生み出すものです。

 私は、Activator=音頭取りの役割を果たすものは、マーケティング・ストーリーだと捉えています。ストーリー(物語)こそが、「ビジネスと人が出会う場」を創り出すからです。

 映画やドラマのように、マーケティングにも「戦略的なシナリオ」が必要です。全体のシナリオを理解せずに、一つひとつのシーンをどれだけ魅力的に演出しても、人々の心を動かすようなマーケティング・ストーリーはつくれません。

 また、消費者の購買行動を喚起し、売れ続ける仕組みをつくるためには、消費者だけでなくビジネスに関わる、社内外全てのステークホルダーがwin-winの関係を構築できる全体シナリオ(設計図)を描くことが必要です。

 マーケティング・ストーリーによって、「ビジネスと人が出会う場」を創り出すためには、フィリップ・コトラー教授が指摘する通り、Browsers(情報収集、調査、検証する役割)とCreators (情報に基づき今までにない新しいアイデアを提供する役割)をバランスよく機能させることが重要になります。

 そして、マーケティング・ストーリーに基づいて、一連のビジネス・オペレーションを統合的に行われる仕組みを構築していくことが、マーケティング・イノベーションを実現させる重要なプロセスとなります。

 名だたるグローバル企業との熾烈な競争時代に入っていながら、日本企業には縦割りの組織やジェネラリスト育成志向の人事ローテーションがいまだに色濃く残っていて、高いスキルや専門性を持ったマーケティング人材が育っていないのが現状です。

 グローバル企業ではCMO(Chief Marketing Officer:マーケティング最高責任者)を先頭に、高度な専門知識を持つプロのマーケターたちがデジタルテクノロジーを駆使、さらにソーシャルメディアやビックデータも活用し、最先端のマーケティングの打ち手を迅速かつ的確に繰り出しています。その緻密なマーケティング戦略に打ち勝つ、日本企業らしい独自のビジネス・プロセスまで含んだマーケティングの仕組みづくりこそが今、求められていることです。

 次回以降、事業活動全体の最適なオペレーションを実施していくためのプロジェクトマネジメントのあり方、さらにその核となる骨太なマーケティング・ストーリーの描き方を紹介していきます。

*次回は4月7日(月)公開予定。