意志の力が先に進むための原動力となる

 個展を開いたとき「夢が叶った」と支えてくれた人に言ったところ、「そんなささやかな夢に協力したわけじゃない。これが夢の実現じゃなくて、ここからがスタートだろう」と言われ、はっとしたことがありました。確かに自分で扉を開けてステージに立ち、人々の前でスポットライトを浴びることはできました。しかし、そこから何をするか、終わって拍手がもらえて初めて「夢が叶った」と言えるのではないかと思ったのです。

 成功する人というのは、ひとつの成功に満足せず、どんどん次に向かう意欲を持っている人です。一発大きく当てて満足する人は、価値を積み上げることができません。自分の内からエネルギーを引き出して走り続ける人でなければ、伸び続けることはできないのです。そこでは個人の意志の力が物を言います。
 どんな大企業の仕事であっても、個人の意志の力は非常に強い力となります。私が三菱商事からSoup Stock Tokyoの事業をMBOした時、強くそのことを感じました。当時の私は三菱商事から出向していたサラリーマン社長でしたから。この事業の利益や規模は、三菱商事の間尺には、正直合わない事業でもありました。それをいざ買い取るとなった時、周囲に相談できる人はいません。つまり個人の意志の力がなければ、MBOはできないのです。三菱商事のような大会社でさえ、こうした個人の意志の力が重要になる局面があります。特にビジネスがうまくいっていない時こそ、意志の力はとても大きな意味を持つのです。

なかった価値を創れば、やりたいことがやれる

 参加者からの質問に、ひとつひとつ丁寧に答えられた遠山氏。
 起業家の育成について問われると、「私は『起業家』を子どもがなりたい職業のひとつにしたい」と夢を語られました。そして行動することが肝心だと話されました。「とにかく打席に立つことです。打席に立って三振しても、それは成長の糧であり失敗ではありません。センスの有無が価値となるかどうかは業種によってそれぞれです。ただ、いろいろ積み重ねて最終的に組織文化の重要性にたどり着くセンスがあれば、いいビジネスが築けるのではないでしょうか」

「やりたいことについて、どうやって周囲の理解を得るのか」という問いについては、「まず自分自身を含め、人の共感を得られるものをやろうとしているのか。そこで言葉を尽くして人に伝えることが重要です。自分の中に明確なものがあれば、人に伝えられます。最初は相手にされなかったとしても、具体的なものを示せば人は動くようになります。最初から大きなものに取り掛かるのではなく、小さなところを変えるだけでも十分です。立派なものでなければいけない理由なんてありません。やれと言われたことをやるのは作業です。新しいことをやって喜ばれる、それが仕事の醍醐味だと思います」

 そして「やりたいことをどのようにイメージするのか」という問いには、「やりたいこをは突然降ってくるのではなく、いろんな引っかかりが重なって、ある時それが確信に変わるのです」と答え、「やりたいこと、という4行詩」を紹介されました。

  必然性を根っこにして
  意義を加えて
  やりたいということに出会い
  なかったという価値を創る

 自分の夢という「必然性」に、社会的な「意義」を与えることで周囲を巻き込み、何をやるのか明確にし、新しい価値を創造する。それが「やりたいことをやる」という意味です。特に最後の「なかったという価値を創る」ことは大切です。日本はガラパゴス化していると言われたりもしますが、逆に言えばオリジナルの宝庫だとも言えるのです。これは大きな強みではないでしょうか。

 今回は非常にユニークな事業を運営されている遠山氏に、起業について聞いてみたいという方が多くいらっしゃいました。いろいろなエピソードを披露された遠山様の語り口には、その穏やかなお人柄がにじみ出ており、とても和やかで笑いに満ちた勉強会となりました。
ご多忙のなかご登壇くださいました遠山様とスープをご提供くださいましたスマイルズの皆様、ならびにご参加いただいた皆様に深く御礼申し上げます。