実験の結果はこうだった――レストランであれ会議室への食事の持ち込みであれ、交渉中に一緒に食事をしたグループは、食事をしなかったグループに比べ明らかに多くの価値を創出した(レストランで交渉した場合は12%、会議室で食事を一緒にした場合は11%、利益が大きかった)。これは、重要事項を決める際に食事をすると、お互いに生産的な議論が行われ、測定可能なメリットや利益がもたらされることを示唆する。

 よい結果を生んだのは一緒に食べるという行為そのものではなく、交渉中に何か他の作業を一緒に行ったからではないのか――。このことを検証するために、私は3番目の実験を計画した。45人のMBAの学生たちに同じシミュレーションを設定、今回はその半数が食事ではなく、交渉内容とは何の関係もないジグソーパズルをしてもらった。しかし、共通の課題に取り組んだグループは、契約交渉だけを行ったグループよりもよい成果を出したわけではなかった。

 私はこう推測していた。食事をともにすること、そして共同作業をすることの両方が、互いへの信頼を高めるのではないか。そして食事をともにするという行為は古くからの文化的習慣であるため、他の共同作業よりもいっそう信頼を高め、よい交渉結果につながるのではないか――。だが、両方の実験で参加者たちに聞き取り調査をしたところ、どちらの場合も(食事でもジグソーパズルでも)信頼のレベルは上がらなかったと報告された。

 では、食事をしながらの交渉で成果が向上する要因として、他に何が考えられるだろうか。それには、職場で生じる生物学的要因があるかもしれない。最初の2つの実験では、食事をした交渉者たちの血糖値はすぐに上昇した。マシュー・ゲイリオットとロイ・バウマイスターの研究によると、ブドウ糖の摂取は複雑な脳の動きを活性化し、自制心を高め、偏見的な態度や攻撃性を抑制するという。他にもターニャ・チャートランドとリック・バン・バーレンの研究によれば、相手の行動を無意識に真似することは、より社交的な行動につながるという。一緒に食事をすることは、お互いに同じような動作を取るということだ。無意識に互いを真似ることで、相手の人物と交渉内容の両方に対して前向きな感情が引き起こされるのかもしれない。

 重要な意思決定を行う際に、食事をともにすると議論の生産性が向上するのはなぜなのか。この理由を突きとめるために、私は今後も実験を重ねていくつもりだ。しかしまずは、交渉の時に「お昼をご一緒しましょう」と相手に持ちかけるのが賢明であることをお伝えしたい。


HBR.ORG原文:Should You Eat While You Negotiate? January 29, 2013

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ラクシュミ・バラチャンドラ(Lakshmi Balachandra)
バブソン・カレッジの助教授。アントレプレナーシップを担当。ハーバード・ケネディ・スクールの女性・公共政策プログラムのフェロー。起業家が投資家とうまく交渉する方法について研究している。