アメリカとイギリスの文化におけるもう1つの大きな違いは、仕事の場での感情表現の度合いだ。アメリカ文化では、熱意を見せることはよしとされ、称賛さえされる。会議で議論になれば、自分の意見を熱心に主張するし、交流イベントで次の雇用者となるかもしれない相手と話す際には、自分の興味について熱く語る。どちらも不適切とは見なされない。実際、交流イベントの場面では、雇用者はあなたの興味が本物であり純粋だということを、あなたの熱意によって納得するかもしれない。しかし、イギリスでは違う。イギリス人の感情表現は一般的にかなり控えめだ。

 イギリスでは、偉大な成果は“not bad”(悪くない)という言葉で表現される場合が多い。挨拶で「調子はどう?」と尋ねれば、返ってくるのはたいてい“fine”(まあまあ/問題ない)の一言だ(アメリカなら“Great!”〈絶好調!〉とか“Good!”〈元気だよ!〉が通常だ)。概して、感情表現よりも節度や抑制が重んじられる。イギリス文化ではハイタッチは一般的ではない。仕事で大きな契約を勝ち取ったり偉大な成果を上げたりすれば、周囲は称賛や祝福をしてくれるが、あくまで控えめだ。しばらくの間は興奮とともに、ささやかなほめ言葉をかけ祝福の意を示すものの、アメリカに比べると、あからさまな熱狂は見せず、それも長続きしない。

 もちろん、アメリカ人の誰もが「典型的なアメリカ流」ではないし、イギリス人もそうだ。異文化でどう行動するかを考える際には、その文化の他の側面についても知っておくことが大切である。たとえば、業界特有の文化が大きな意味を持つかもしれない(イギリスの投資銀行は、イギリスのテレビやメディア業界とはまったく異なる規範を持つ可能性がある)。同じことは、企業文化(グーグルとバークレイズの文化は同じではない)や、接する人々それぞれの文化的背景についても言えるだろう。特にアメリカとイギリスの職場は、実に多様な出身国の人々で構成されているのだからなおさらだ。

 それでも細部はどうあれ、私が言わんとするところは変わらない。アメリカとイギリスの言語が共通であっても(この点についても議論の余地はある)、ビジネス上のコミュニケーションのスタイルが共通だとは限らない。表面的な類似性は、根底にある重要な違いを覆い隠す場合がある――この認識は、どの文化に適応する場合にも忘れてはならない重要なポイントである。


HBR.ORG原文:Common Language Doesn't Equal Common Culture April 3, 2013

■こちらの記事もおすすめします
影響力5つのスタイル(後編) 特性を知って使い分ける
グローバルな人脈づくり文化の論理を理解する

 

アンドリュー・L・モリンスキー(Andy Molinsky)
ブランダイス大学インターナショナル・ビジネススクールの准教授。担当は組織行動学。心理学部准教授も兼務。