では、企業がデジタルコンテンツから収益を得るには、どうすればよいのだろうか。そのためには新しいアプローチが必要だと我々は考えている。具体的には、売り手と買い手のやり取りを取引ベースから関係ベースへと移行させる価格構造を提案したい。この方式には、今日のソーシャルネットワークを活用した市場に見られる3つの重要な要素が反映される。

1.権限委譲(価格設定の権限を顧客に与える)
 企業は、これまで自社が行ってきた活動を顧客に委ねるようになっている。これは製品開発や広告に顧客を巻き込むマーケティングでよく見られるが、マネタイズについてはどうだろうか。顧客にも価格設定に参加してもらうことで(ある程度の制約は設けるべきだが)、顧客が関与する度合いを高めてみてはどうだろうか。

2.対話(顧客とのコミュニケーションを価格設定に結びつける)
 顧客の意見を汲み取ることは、誰もが考える。しかし、売り手がコミュニケーションに参加し、顧客と本当の意味で対話することはどのくらいあるだろうか。対話があるとしても、それは価格設定のプロセスにどれほど直接結びついているだろうか。最新のeコマースのシステムによって、価値に焦点を当てた多数のインタラクションを自動的に実現できるようになったが、この能力は十分に活用されていない。

3.信用(価格設定の権限を信用度と結びつける)
 収益化のアプローチに、社会関係資本の概念を取り入れる。その方法として、上記1で示した価格設定の権限を顧客が意図的に行使する時に、それに連動した信用度スコアをつくればよい。ここでは、取引を重ねるごとにスコアが変化していくという点が重要になる。

 我々は、上記を柔軟性のきく基本的な構成要素と考えている。これらの具体的な構成例として、我々がフェアペイ(FairPay)と呼ぶアプローチをご覧いただきたい。

1.権限委譲
 これは思い切った手法だが、買い手にまず商品を体験してもらってから、価格を自由に設定してもらう(「タダ」でもよい)。ここでは2つの理由から、時間が重要となる。(a)顧客は値付けをする前に商品を理解する十分な時間が必要であり、(b)時間をかけて関係を築くことで、相互依存という強力な社会規範が促進される。なお、タダ乗りを避けるための制約として、今後のフェアペイ取引に対する権限を企業側が持つ(例:値付けの権利を顧客から取り上げることができる)。

2.対話
 企業は参考価格を提案して、顧客の値付けに一定の基準を設ける。商品の価値を顧客に気づいてもらいたい場合には、レポートを用意する。顧客には、設定した価格の理由を示してもらうことで正当化を促し、企業はそれに反論してもよい。ここで重要となるのは、最新の選択構造を活用し、パーソナライズ可能で拡張性のある対話システムを組み立てることだ。そのためのテクノロジーは存在する。

3.信用
 まず、顧客を公平性に基づき採点する。そこに選択構造を適用し、顧客を公平性やその他の特性に従ってグループ分けする。収益性を改善したい場合には「アメ」(提供コンテンツの拡張、特典など)を使い、顧客を何とかつなぎ留めておきたい場合には「ムチ」(値付けの権利を取り上げるという警告)を使う。

 このフェアペイという我々のアプローチは、3つの基本原則の応用例の1つにすぎない。このフレームワークの活用法は企業によって異なるだろうし、ユーザーの自由な値付けを完全に受け入れるのは難しいという企業もあるかもしれない。しかしこうした実験は、企業が直面するデジタルコンテンツの収益化という難問を克服するためには必要なのだ。「無料か有料か」という議論を乗り越えて、顧客に権限を与えコミュニケーションを取り、支払うことを選んでくれた人に報いる――これこそがカギとなる。


HBR.ORG原文:When Selling Digital Content, Let the Customer Set the Price November 18, 2013

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マルコ・ベルティーニ(Marco Bertini)
ロンドン・ビジネススクール准教授。主に価格戦略の研究と指導を行っている。

 

リチャード・リースマン(Richard Reisman)
メディアテクノロジーの研究開発を行うブティック型企業、テレシャトル・コーポレーションの創設者。数多くの先駆的なデジタルサービスの開発実績を持つ。