アリババとアマゾンには似ている点もいくつかある。どちらもBtoB、BtoCの部門がある。もっとも、アマゾンはかなりBtoC指向だ。そしてどちらも極薄のマージンで儲けを出している。しかし、アマゾンの倹約ぶりにも増して、アリババはさらに低いマージンで利益を出すことができている。中国の人件費や法人税の安さといった、いくつかの比較優位があるからだ。さらに、両社とも広告から収入を得ている。しかし広告はアマゾンにとっては収入源の1つにすぎないが、アリババにとっては主要な収入源だ。

 今後両社がどのような展開を見せていくか興味深いが、このような状況に対して、破壊的変化の理論から特定の可能性を導き出すことができる。2つのシナリオについて考えてみよう。

第1のシナリオ
 アマゾンは、この新たな挑戦者に反応せず、最も収益性の高い顧客に焦点を当て続ける。これは「動機の非対称性」の典型例だ。新たな収入源を開拓することよりも、限界収入(追加単位当たりの収入)を増加させるほうに魅力を感じる。このシナリオではアマゾンは、従来の実店舗ベースの小売業者に対する破壊者として、高所得者重視の路線を継続していく。一方のアリババは、それほど頻繁には購入しないがたびたび閲覧はする、という巨大な顧客セグメントの一部を獲得して、米国市場での足場を得るだろう。閲覧者が何も買わなくても、アリババには広告収入が入る。

 このシナリオが具体化した場合、アマゾンが売上高と利益の記録を更新する一方で、アリババは思いのほか早く主要なプレーヤーになると期待される。アリババは成長を続け、いずれアマゾンはアリババと競合する分野で行き詰まるだろう。アリババの拡大する顧客ベースが、アマゾンのベンダーをますます引きつけるようになるからだ。アマゾンのビジネスモデル全体が規模の経済に基づいていることを考えると、成長率が下がるのは非常に深刻な問題だ。

第2のシナリオ
 アマゾンがアリババの収益モデルを導入した独立部門をつくる。破壊に対抗し成功を見込むための、戦略的な対応だ。ただし、このシナリオではアマゾンは2つの大きな問題に対処しなければならない。まず、カニバリゼーションを回避する方法を見つけること――これはネット販売では非常に難しい。第2に、アマゾンのビジネスモデルでは独立した小売事業部門をつくるという先例がない。しかも最近の派手な投資のせいで、立ち上げ資金を集めるには非常に微妙なタイミングにある。それでも、もしアマゾンがこの独立部門の立ち上げに成功したら、アリババは米国市場で確かな足場を得るとしても成長を持続させることははるかに難しくなるだろう。

「他社のマージンは私にとってのチャンスだ」――これはジェフ・ベゾスの最も有名な言葉の1つである。私たちは今年、マージンゼロの競争相手に対してアマゾンのビジネスモデルにどんなチャンスがあるかを目にするだろう。アマゾンのやることに間違いはない、と思えるような時にも、破壊的変化の理論はこう告げている――このような状況では、何もしないことも間違っていると。


HBR.ORG原文:Alibaba: The First Real Test for Amazon’s Business Model January 21, 2014

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フアン・パブロ・ヴァスケス・サンペレ(Juan Pablo Vazquez Sampere)
スペイン・マドリードにあるIEビジネススクールの教授。経営管理論を担当。