他の誰かと同じところからインスピレーションを得ていては、他者よりも速やかに(あるいは、深く)学べない。学びが最も大きいのは、自分と大きく異なる人、経験、アイデアに触れる時であり、教育者はこの点を理解している。にもかかわらず、私たちはほとんどの時間を自分と同類の人や馴染みの場所――親しい同僚、いつものオフィス、安心できる地元――で過ごす。しかし、変化に遅れを取らずに学ぶためには、視界を広げ、もっと広い世界で生きなくてはならない。

 第2に(戦略的な要素として)、自分と無関係な分野の古いアイデアが、自分の分野に新しいアイデアをもたらす最高の源泉になりうる。数カ月前、私は食品小売業界の幹部たちが集う会合でイノベーションについて話す機会があった。参加者の1人が、苛立ちを隠そうともせず、上司への対処法について私に助言を求めてきた。「上司にいつも言われるんです。『とびきり斬新なアイデアがほしい。そのアイデアの有効性を示す3つの事例も添えてね』と」。聴衆も私も、その上司の愚かな語義矛盾に気づいて笑いだした。

 しかし、そのあとで私は考えさせられた。ある業界での標準的なオペレーション手法は、別の業界にとっては「斬新なアイデア」を得るための強力な源泉になりうるのも事実である。つまり、ある場所で確立されている業務慣行が、別の場所へと動かすだけでまったく革新的なものに見えるのだ。

 たとえばトヨタ〈レクサス〉のリーダーたちは、高級車にまつわる顧客体験を再構築するためのさまざまな新規アイデアを探るうえで、フォーシーズンズホテルやアップルのようなブランドを研究した。これらは自動車とは何の関係もない企業ではあるが、成し遂げてきたことは素晴らしい。ロンドンのグレート・オーモンド・ストリート小児病院の医師と運営者らは、フェラーリのF1チームのピットストップを研究し、外科手術の手順を見直した。

 企業のR&D部門はたしかに、研究と開発を行うために存在している。しかし別のR&D、すなわち模倣(Rip-off)と複製(Duplicate)を行う余地もあるはずだ。ある業界ではありふれたアイデアでも、別の業界に移されれば――特にそれが、多くの業界における前提や通念に反する場合には――革新的となりうるのだ。

最後に(人的な要素として)、優れた学習者は他者との関わりを絶やさないよう努める。近頃では、最も鋭い洞察は予想もしなかった場所からもたらされることが少なくない。たとえば、社内のどこかにまだ発見されていない天才が潜んでいるかもしれない。そして顧客やサプライヤーのなかにも、頼みさえすれば嬉々として知識を提供してくれる集合知がある。だが、こうした人々を活用して学習するためには、リーダーとしての新たな姿勢が必要だ。困難な問題に取り組む強い意欲、そして出会ったすべての人から学ぼうとする謙虚さである。1人よりも誰かと一緒のほうが、速く学習できる。

 誰もが、優れたリーダーでありたいと願っている。そして最高のリーダーとは往々にして、飽くなき学習者である。あなたは、世界の変化に遅れを取らないために、どのように学んでいるだろうか?


HBR.ORG原文:Are You Learning as Fast as the World Is Changing? January 26, 2012

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ウィリアム・テイラー(William C. Taylor)
『ファストカンパニー』誌の共同創刊者。最新刊は『オンリーワン差別化戦略』(ダイヤモンド社)。既刊邦訳に『マーベリック・カンパニー 常識の壁を打ち破った超優良企業』(日本経済新聞出版社)がある。