このことは、インタビューや会議などのフォーマルな場面にも当てはまる。雑談は、真剣な議論を始める前のフレンドリーな前置きに用いられることが多い。さらに、予定されていない偶然的な場面でも威力を発揮する。社内のエレベーターや地下鉄で上司と乗り合わせた時に咄嗟に交わす会話や、会社のイベントで隣り合わせた同僚やクライアントとの会話などだ。

 上記のすべての場面で、雑談は人と人を結ぶ重要なツールとして機能する。相手に受け入れられるか拒絶されるかは、最終的には、仕事のもっと具体的な側面に基づいて決まるだろう。とはいえ、その過程では相手に与える印象が大きな意味を持ち、あなたの実際の生産性に対する判断に影響することもある。

 ここで問題になるのは、当然ながら、雑談のあり方が文化によって異なることだ。どのように交わされるかだけではなく、ビジネス上のコミュニケーションにおける役割や重要性も異なる。多くの文化、特に形式張ったコミュニケーションや上下関係を非常に重視する文化では、上司と気軽に会話するなど不適切だと見なされる。そのうえ、雑談を通して自分の意見をあからさまに伝えることは礼を失するとされ、危険にさえなりうる。相手の意見と対立する可能性があるからだ。たとえば、特定のチームのファンだとか、あるいは何かについての意見を、相手の意見を知らずに口にしたとしよう。相手は自分の好みを言えなくなるか、対立する意見を言わざるをえなくなり、気まずい思いをするかもしれない。

 多くの文化では、見知らぬ人に雑談やプライベートな話を振ることは、とりわけ不適切と見なされる。赤の他人に当たり前のように個人的な話をするのは、世界中でアメリカ人を含めごく限られているだろう。

 さらにいえば、「最近、どうしてるの?」とか「調子はどう?」といったアメリカ流の言い方は、そういった問いに具体的に厳密に答えることに慣れている他文化の出身者には、軽薄に感じられる。「調子はどうか」と訊かれた当人は、相手が実際にその答えを知りたがっていると考えるのも無理はない。ところがアメリカでは、これは形式的な挨拶のようなもので、本気で長い答えを求めているわけではない。「最近はどう?」と訊かれてとうとうと語ることは、アメリカではほとんどの場合不適切だろう。

 もしあなたがよその国からアメリカに来ていて、人脈と信頼を築くためにスモールトークの使い方を学びたいとしたら、どうすればいいだろう? 第1に、アメリカで通用する自分なりの雑談力を磨くことだ。話題の範囲、声の調子、話し方(およびボディーランゲージ)などについて、人々のやり方を見習おう。とはいえ真似る必要はない。そんなことをすれば、わざとらしいと思われマイナスとなる。あなたなりのやり方を見出せば、違和感を抱かず自信を持ってスモールトークを使えるようになるはずだ。

 第2に、自分の雑談力に磨きをかける一方で、なぜアメリカ人が雑談を交わすのかを、文化的観点から理解すること。あなたの立場からすれば、アメリカ流の雑談は軽薄で不適切で、無用なもののように感じられるかもしれない。しかし、アメリカ人もそう考えているだろうか? 異文化を現地の価値観を通して理解すれば、やがては納得してその規範を取り入れられるはずだ。

 だから、次に誰かに「調子はどう?」とか、「天気はどうかな?」と声をかけられたら、馴れ馴れしいとは思わずにチャンスと捉えよう。相手と関係を築き深める手段として、アメリカ流のスモールトークを使うのだ。


HBR.ORG原文:The Big Challenge of American Small Talk February 27, 2013

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アンドリュー・L・モリンスキー(Andy Molinsky)
ブランダイス大学インターナショナル・ビジネススクールの准教授。担当は組織行動学。心理学部准教授も兼務。