両者のインセンティブを一致させ、農家のリスクを軽減するために、ネタフィムが提供し始めたのが「イリワイズ作物管理システム」という新たな仕組みだ。イリワイズは全体の灌漑システムの設計から、必要なすべての機器の提供、システムの設置、定期的な関連サービスまでを含めた統合的な提案である。最も重要な点は、農家はこのシステムを買う必要がないということだ。ネタフィムが設置コストを負担し、農家は収穫量の増加に応じて適宜後払いすればよいのである。

 ネタフィムは収穫量に関してリスクを取るようになったことで、最大の収穫を得るためにサービスを改善したり、機器の調整、維持をはかったりするインセンティブが生じるようになった。ついにはミッション・ステートメントまで変え、それまでの「お客様のために、最高の点滴灌漑機器を製造する」から、「より少量(の資源)でより多く(の作物)を世界で育てる」とした。従来と比べると、顧客である農家の目標にずっと寄り添ったミッションである。同社の売上げは劇的に増加し、市場シェアも拡大しただけでなく、世界で最も貧しい人々の生活を変えるような影響を与えることになったのである。

 しかし、なぜネタフィムは自社負担による機器の設置や、収穫量に応じた報酬の後払いというリスクをすすんで取ろうとするのだろうか。

 直感に反することではあるが、リスクを増やすことはネタフィムの優位となり、関係者全員のメリットにもなる。第一に、ネタフィムは最新の天候予測技術へのアクセスと専門知識を持っているので、同社のリスクは農家にとってのリスクよりもずっと小さい。第二に、ネタフィムは農家よりもはるかにうまくリスクを管理できる。広範な地域市場で大規模に展開しているので、壊滅的な損害を被る確率は一農家のそれよりもずっと小さい。同社は現在、より効率的なリスク負担から得られた利益を農家と共有できる。会社の売上げが増えることで、農家にとってのリスク/リターンの割合を向上できるのである。

 我々がHBRの論文「リスク・マネジメント型ビジネスモデル」(本誌2011年8月号)でも述べたように、新たな技術を真の意味で軌道に乗せるには、ビジネスモデルに関してもイノベーションを起こすことを考える必要がある。


HBR ORG.原文:When Business Models Trump Technology November 19, 2012

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カラン・ジロトラ(Karan Girotra)
INSEADのテクノロジー・アンド・オペレーション・マネジメント担当教授。

セルゲイ・ネテッシン(Serguei Netessine)
INSEADのグローバル・テクノロジー・アンド・イノベーション・ティムケン記念講座教授。