イェンスがこの違いを認め、適応すべく自分の振る舞いを変えようという気になるまでには、相当な時間と労力が必要だった。彼にとって、こうした動機づけの方法はぎこちなく不自然に感じられたからだ。部下に「甘く」接することに乗り気ではなく、その効果に大いに疑問を持っていた。しかし時間とともに、かなりの試行錯誤の末ではあったが、イェンスは新しいフィードバックのスタイル――中国という環境で効果があり、ドイツ人として心情的に何とか容認できるやり方――を身につけていった。時間と労力はかかったが、結果は実にうまくいった。

 業績評価のフィードバックは明らかに、ドイツと中国、あるいはイギリスやアメリカであれ、文化によって非常に異なる。優秀なグローバル・マネジャーとして、どうすれば自分のフィードバックのスタイルを新しい環境にうまく合わせることができるだろうか。

ヒント1:新しい文化のルールを学ぶ
 これは明白なことのように思える。しかし私が接したマネジャーの多くは、いかに自分のスタイルが普遍的だと思い込んでいたか、そして文化の違いに対する認識不足のせいで最初にどれほど大変な目に遭ったかを語る。直接的な言い方や核心を突くことは、どの程度なら妥当なのか。グループ内でフィードバックを伝える時に、相手のメンツや社会的立場を保つことはどのくらい重要なのか。その文化に関する文献を読み、実際の行動を観察しながら「文化的規範」を学ぶことは、異文化に精通するための最初のステップである。

ヒント2:文化への適応を助けてくれるメンターを見つける
 イェンスの場合は中国生まれの「文化的メンター」の助けを借りて、苦境から抜け出すことができた。そのコンサルタントはドイツ生まれではなかったが、グローバルな経験が豊富で、多国籍企業で長年要職を務めていた。あなたの立場と現地の文化的規範の両方を尊重するメンターがいれば、現地に適し自分にとっても違和感のない、新たなスタイルの確立を助けてくれる。

ヒント3:すべてを現地流に合わせるのではなく、自分の振る舞いをアレンジする
 成功するためには「現地化」が必要だ、と思い込んではいけない。イェンスの場合は、ドイツ流よりも率直さを幾分抑えることでフィードバックのスタイルを調整し、それが奏功した。多くの場合、(自分流と異文化の)混合型のアプローチを取れば、自分にとって自然かつ新たな環境にも適した振る舞いが可能になる。

 ますますグローバル化が進むこの世界では、そこが海外の赴任先であれ自国のオフィス内であれ、異文化出身の同僚と直接顔を合わせる機会が増えている。マネジャーにとって、文化的差異を超えて難しい会話をうまく進める方法、批判的評価を与える方法を学ぶことは容易ではなく、多くの重要な違いを考慮しなければならない。しかし、上記のヒントを頭に入れておけば、世界のどこにいようとも、あなたは正面からこの難題に取り組むことができる。


HBR.ORG原文:Giving Feedback Across Cultures February 15, 2013

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アンドリュー・L・モリンスキー(Andy Molinsky)
ブランダイス大学インターナショナル・ビジネススクールの准教授。担当は組織行動学。心理学部准教授も兼務。