だとしたら、なぜ私たちはそんなふうに人生を送らないのだろうか。落ちることを、たとえそれが失敗であろうと、波乗りの一部として受け入れないのはなぜなのか。

 それは、私たちが感情を恐れるからだ。

 考えてみよう。前述したどの状況でも、最大の恐怖は「嫌な気分になること」だ。

 ずっと避けてきた恐ろしい会話をしたために、相手との関係が終わってしまったら? 傷つくはずだ。

 ビジネスのアイデアを実行した結果、お金を失ったら? 悲惨な気分になるだろう。

 企画書を提出して拒絶されたら? とても不快だろう。

 つまり、こういうことだ――たいていの場合、ある感情を恐れていても、それを避けることはできない。単に、その感情に捕らわれる時間を苦しいほど長引かせるだけだ。先延ばしにすることで苦しみを感じるし、関係が行き詰まっていれば苛立ちを感じる。長年うまくいっていない男女関係の場合、それは両者が深刻な問題を認識していながら、どちらも口を開こうとしない。しかし、リスクを取ること、その結果として落下(失敗)することは、避けるのではなく奨励すべきことなのだ。だが、どうやればいいのだろうか。

「練習」だ。

 リスクを取り、その結果湧き上がる感情を味わうのだ。そうしたからといって死ぬわけではないことに気づき、再びボードに乗って波を求めて漕ぎ出すのだ。

 厄介な会話をあえて始めよう。同僚に批判された時には、身構えずに耳を傾けよう。目を背けてきた重要な問題について、声を上げよう。拒絶される経験をしてみよう。

 そして、その時に生じるすべての感情を味わうのだ。リスクに対する覚悟や不安感を味わおう。そして、実際にリスクを取っている間やその後には、深呼吸し、さらに感情を確認しよう。

 あなたはそれらの感情に、やがて慣れるはずだ。そして意外にも、それを楽しめるようになる。不愉快な感情も例外ではない。なぜなら、感じることは、生きている実感を与えてくれるからだ。

 おかしな言動を取ってしまった後に、焦りを感じたことは誰もがあるだろう。恥ずかしさのあまり動揺し、皆に背を向けたくなる感覚だ。次に同じことが起きたなら、その感情をしっかり味わう時間を取るといい。

 そうすれば、それも案外悪くないと気づくだろう。「自分でもなぜこんなことを言ってしまったのか、わからないんだけど」と、相手に謝るかもしれない。そして2人で笑い飛ばすだろう。あるいは、長年避けていたけれど、必要だとわかっていた会話を始めるきっかけになるかもしれない。

 やがて、あなたは感情を恐れなくなる。早朝のサーファーのように、自分の感情に対して勇敢に向き合うだろう。夜明け前に目を覚まし、恐ろしい会話や困難な提案へと身を躍らせる。かつて恐れたリスクを、すすんで取るようになるのだ。そして海に落ちる――時には失敗して。

 そして立ち直り、挑戦を繰り返すだろう。


HBR.ORG原文:The Unexpected Antidote to Procrastination May 10, 2013

■こちらの記事もおすすめします
モチベーションは自分の「物語」から生まれる
失敗の「義務化」で瀕死のPBSデジタルは再生した
「失敗力」を使って、創造性を発揮する

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。