しかも、気仙沼の「森は海の恋人運動」では、地元で牡蠣養殖業を営む畠山重篤氏が団体の代表を務め、「豊かな海は豊かな森があってこそ生まれる」という観点から、気仙沼湾に注ぐ河川上流にある室根山への植樹を続けています。

 一方で、ルイ・ヴィトンもトランクの素材にポプラ材を用いるなど、森林との関係が深いブランド。震災以前にも、森林の再生を目的にした「ルイ・ヴィトンの森」というプロジェクトを長野県小諸市で始めていました。

 このように、ルイ・ヴィトンの牡蠣養殖支援には、「クラフトマンシップへの共感」や「牡蠣がつないだ東北とフランスの絆」、そして「ルイ・ヴィトンと森の深い関係」という幾層にも重なった物語が背景にあります。それが社会貢献活動に対する必然性を裏付け、そのブランドが生活者にとって「信頼に足る」とみなされることにつながっているのです。

ブランドに信頼が求められるのは、結婚相手に誠実さを求めることと同じ

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並河進氏:電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属クリエーティブ・ディレクター/コピーライター。著書に『下駄箱のラブレター』、『しろくまくんどうして?』、『ハッピーバースデイ3.11』、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』など。

 また、ソーシャルメディア時代の社会貢献のあり方を考えるうえで、「物語」には人々の共感を集める非常に強い力があります。企業と社会をつなぐ「ソーシャル・デザイン」のプロジェクトを多く手がける、電通ソーシャル・デザイン・エンジンのコピーライター、並河進氏はこう説明します。

 「例えば企業が社会貢献をする場合、何らかの活動に寄付をするだけでは多くの人を巻き込んでいけません。これは僕の経験としても実感するのですが、社会貢献に参加してくれるボランティアや著名人は、そのプロジェクトの背景にある物語への“共鳴”で集まってくれるんです。しかもこの傾向は、ソーシャルメディアの普及によってどんどん加速しています。良い物語を聞いたら誰かに伝えたいと思うように、ソーシャルメディアにおいては魅力的な物語が広くシェアされ、企業と社会をつなぐ役目を果たしているんです」

 スイスの高級時計ブランド「ジラール・ペルゴ」が被災地支援でサポートする「東北マニュファクチュール・ストーリー」というプロジェクトは、並河氏の言う「魅力的な物語が企業と社会をつなぐ」ことを表す好例となっています。