アメリカには「1ドル札を使うことは1票を投じることと同じ」という考え方があるそうですが、そうした消費意識が世界中で非常に顕著になってきているのです。

 「BAVでは過去20年にわたる世界51ヵ国、4万超のブランド・データを蓄積しています。そこで見えてきた変化は、生活者の消費活動が『自分の欲求を満たすもの』ではなく、『自分にとって本当に必要なもの』にシフトしていることでした。ラグジュアリー市場でいえば、『富や権力の誇示』や『羨望』といったステータスをテコにしたマーケティングが無効化しているのです。それよりも重視されるのは、そのブランドは自分がお金を使うに値するほど、社会的に信頼できるのか。そうした『中身』を人々が厳しく見つめるようになっています」(戸川氏)

 社会貢献はそんな要求に応える活動と言えます。ただ、ここでポイントになるのは、「そのブランドがなぜ支援するのか」という動機の必然性です。それがなければ、企業の活動を厳しく見つめる生活者から、「単なるイメージアップ」と受け取られかねません。

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ルイ・ヴィトンは宮城県気仙沼で牡蠣養殖業を営む畠山重篤氏が代表を務める「森は海の恋人運動」活動を支援している

 「そういう意味では、ラグジュアリーブランドの社会貢献は必然性の伝え方において参考になります。クラフトマンシップや伝統といったストーリーテリングが命であるラグジュアリーブランドの活動には、背景に必然性を伴った『物語』があるからです」と戸川氏。前出のルイ・ヴィトンにおける気仙沼「森は海の恋人」の活動支援を例に説明しましょう。

 フランスのブランドであるルイ・ヴィトンがなぜ気仙沼の牡蠣養殖を支援するのか。

 まず、クラフトマンシップを大切にするルイ・ヴィトンにとって、丁寧な手作業で行われる気仙沼の牡蠣養殖に共感するメンタリティがあったこと。さらに実は50年前、フランスのブルターニュ地方の牡蠣が病気による壊滅的被害にあった際、宮城県産の種牡蠣(養殖牡蠣の子ども)が送られ、現地の牡蠣産業を救ったという経緯もありました。