こうした被災地への支援に限らず、近年ますます多くの企業が社会的課題の解決に取り組むようになっています。それは「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility=CSR)という言葉で表されてきたように、現代の企業にとって欠かすことのできない“責任”と見られています。ましてや、高級品を扱うラグジュアリーブランドにとっては、その責任はより強く求められます。

 しかし、こうした現状は企業にとってはブランドの成長や差別化を促すチャンスでもあります。社会貢献を単なる「慈善活動」で終わらせず、生活者との新しいコミュニケーション手段と捉えれば、企業やブランドにとって新たな価値を生み出す源泉になるからです。

 そのためには何が求められるのか。ラグジュアリーブランドにおける被災地支援の背景を探ることで、そのヒントが見えてきます。

 

社会貢献における固有の「物語」が、ブランドの信頼性を高める

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戸川正憲氏:電通ヤング・アンド・ルビカム、コミュニケーション・デザイン局ターゲット・インサイト部シニア・パートナー。現在はグローバル・ブランディング・ツールである「Brand Asset Valuator」を用いたブランドの開発や海外展開、ブランドを核にした戦略の構築などを担当している。

 「企業と生活者の関係を考えるうえで、『信頼』は非常に重要な要素になっています。ロゴのように単なる『名前』で消費される時代は終わり、そのブランドの『中身』に人々が注視するようになっているのです」

 そう語るのは、電通ヤング・アンド・ルビカムのシニア・パートナー、戸川正憲氏です。同社はアメリカの広告会社「ヤング・アンド・ルビカム」グループの一員として、世界最大級のブランドデータベース「Brand Asset Valuator(BAV)」に基づいたさまざまな分析やサービスを提供しています。

 このBAVの調査によると、リーマン・ショックに端を発する世界的な大不況により、ブランドに対する「信頼」は大きく失墜しました。その失われた信頼を回復するべく多くの企業がさまざまな活動を行っているのですが、ソーシャルメディアで企業の振る舞いが可視化された現状では、かつてないほどに「ビジネスの透明性」や「企業も社会の一員であるという自覚」が生活者から求められるようになっています