「行き過ぎた」コントロール願望

 コントロールイリュージョンによる全能感は、時として「成功はすべて自分の実力、失敗はすべて環境のせい」など、行き過ぎた楽観論を生むことがある。

 コントロールイリュージョンは、ランダムに発生している結果に対して、よい結果であれば「自分の関与がプラスに働いた、自分の優れた能力の賜物だ」ととらえ、自分は「何でもできる!」という一種の幻想にとらわれることだ。

 結果、自分には能力があるから、「この先何があっても乗り切ることができる」という過剰な楽観論を生み出してしまう。

 コントロールイリュージョンは、私たちが日常的に感じる過剰な「自信」と表現することもできる。こうした「こだわり」のようなものこそが、市場においてアノマリーと呼ばれる事象を作り出す要因の一つとなっている。特に情報が限られたケースでは、人間はその予測能力を用いて自分なりの論理展開を行い「これで納得」という一種の自信を作り上げて意思決定を行う。こうして、人間の心理は「自信=自分には知識も能力もある」という幻想をもたらしてしまうのだ。

 しかし、その自信が、客観的に把握可能な知識や能力と同質なものでないということは明らかである。私たちの非合理的な意思決定の源泉は、こんなところにもあるのだ。

 コントロールイリュージョンにどう対処すればいいのか?

 コントロールイリュージョンから完全に逃れることはできない。だからこそ、日ごろから「周囲の意見に耳を澄ます」という当たり前のことが重要なのだ。ここでは事例からその重要性を指摘する。

 コントロールイリュージョンの事例として、友人のアナリストJ氏の逸話を紹介しよう。

 彼はITバブルの折、インターネット銘柄担当のアナリストとして活躍していた。彼は、ITバブルが始まる少し前まで別の証券会社で株式の営業マンをしており、ベテランアナリストに比べると経験も知識も不足していた。だが、知識の少なさをカバーしようと必死に勉強し、資格試験にも合格するうちに、徐々に周囲の注目も集まるようになり、知らぬ間に「自分はできる」と過信してしまったのだ。今の市場環境はバブルだと指摘する声が多かったにもかかわらず、J氏はまさにバブルの震源であるITセクターの株価が上がっているのは、自分の予測の正しさを証明していると思い込んだのだ。当時、J氏とベテランアナリストが提出した、ある銘柄に対するレポートの内容を見てみよう。