意思決定はここまで歪む――価値関数と決定の重みづけの融合

 私たちは、一見したところ発生確率の低い事象に過度に期待をもち、一方、発生確率の高い事象を心配しがちだ。つまり、主観的判断によって事象が起こる確率を歪めてしまうのである。

 今、手元に100万円あると想像してほしい。その使い道については、株式投資、投資信託、保険商品、あるいは自動車の購入、豪華な食事など数多くの選択肢があるが、最もリスクの低い商品のひとつである貯金と、高額当選の確率は極めて低い宝くじの2つが残っているとしよう。宝くじに当選すれば億万長者は間違いなしだ。このとき、儲かったときの喜びを考えるだけで嬉しくなってしまい、合理的に考えれば発生確率が低いとわかる選択肢を選んでしまうことはないだろうか。このようなとき、「主観的な」発生確率の測定やその実現への「主観的な」期待が作用している。これこそが決定の重みづけのコアとなる考えだ。

 ではここで、決定の重みづけと価値関数を融合させて、不確実な環境下での意思決定のあり方を考えてみよう。あなたは今、図2の例と同じ条件で、手元にある100万円を株式に投資しようと考えている。

 まず投資家は、たとえば1年間でどれだけの利益を獲得できるかを予想する。この予想にはROE等の各財務指標など客観的データも活用されるが、「これくらいの利益は欲しい、このくらいの利益は出るはずだ」といった主観的期待も決定要因として考える必要がある。つまり、客観的なデータ(ROE、PERなど)が入手可能であるとしても、投資家の主観的な期待によって、こうした情報に投資家の期待が大きく影響する可能性もある。そしてこの期待値をもとに、投資家は購入価格を決定しリファレンス・ポイントが形成される。

 この投資家が高いリターンを追求するほど、リファレンス・ポイントが原点から移動する距離は大きくなる。仮に過半数の市場参加者が、5万円未満の利益しか期待できないと考えているとしても、この投資家にとっては関係ない。あくまでも自分の欲望を満たす利益水準をもとに購入価格を決め、そこからのリファレンス・ポイントの移動距離と満足度の関係によって意思決定を行うことになるだろう。