鍛える文化と褒める文化の融合が組織を強くする

――理念の共有ができており、それを体現しようという意識の高い社員が多くいるなかで、さらに「満足ポイント制度」を導入されたのはなぜでしょうか。

 これは運輸業界に共通して言えることだと思いますが、以前はいわゆる体育会系の「鍛える文化」でした。「お客様のためになっているかどうか」を徹底的に考え、できていなければ叱るやり方は、サービスの質を高める方法として正しかったと思います。しかし、時代の変化とともに女性の雇用や、叱られることに慣れていない世代の社員も増え、「鍛える文化」だけではモチベーションが保てなくなることも分かってきました。

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木川 眞(きがわ・まこと)
1949年生まれ。ヤマトホールディングス代表取締役社長。 一橋大学商学部卒業後、富士銀行入行。みずほコーポレート銀行常務取締役を経て、2005年にヤマト運輸に招聘され、2007年ヤマト運輸代表取締役社長に就任。2011年より現職。社長就任以降、新サービスや海外進出を積極的に展開している。


 そこで「鍛える文化」を残しつつ、「褒める文化」を根付かせるための道具立てが「満足ポイント制度」でした。これは人から褒められたり人を褒めることで得られるポイントを「満足BANK」に貯めることで、どのような満足を生み出せたかが分かるシステムです。一定ポイントを貯めれば表彰され、バッジがもらえるのですが、それがその人の誇りとなります。
 人を褒めるのは叱ることよりも難しいことです。相手をよく観察していなければ褒めることはできません。実際の導入時には「互いにやらせや自演が横行するのではないか」といった反対意見もありましたし、一部には人事評価に影響するのではないか、といった懸念もありました。しかし、やらせでポイントを集めたとしても、そのあとはそれに見合った満足を生み出さざるを得ない状況になるわけですから、結果として良い方向に動くと考え、導入に踏み切りました。実際、自分がとても高い評価を得ていたことに感動して、退職を思いとどまった社員が現れるなど、「褒める文化」は有効に機能しています。
 むやみに褒めては人の成長を阻害しかねませんが、これまでの鍛える文化と融合させたことで社員の質が向上し、組織としてより強くなりました。いまでは協力会社の人たちまで褒める対象に広げている部署もあり、ヤマトグループを取り巻く、より大きな輪の満足度を高めることにも成功しています。(後編に続く)