ビッグデータ時代のマネジャーに求められる、「データを伝える力」

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 これを非常にうまく実践したのが、ワシントン大学で結婚について科学的に研究している著明な学者、ジョン・ゴットマン教授である。ゴットマンは統計学の専門家との協働により、結婚生活がどれくらい持続するかを予測する「結婚の方程式」を開発した。この公式は、金銭や義理の両親といった「難しい」話題について夫婦に15分間の対話をしてもらい、肯定的なやり取りと否定的なやり取りの比率に基づいて予測を算出する。難しい話題を話し合う最中に、愛情、ユーモア、または幸福感を示した夫婦には最大のポイント数が与えられ、けんか腰の態度や軽蔑を示したカップルには最低のポイント数が与えられる。数百組の夫婦を観察したゴットマンと研究チームは、夫婦間の対話を採点して離婚するか幸せな結婚生活が続くかを予測するパターンを特定した。

 この研究はそれ自体優れているが、ゴットマンの活動はそこで終わらなかった。妻のジュリーと共に非営利の研究所と営利組織を設立し、研究成果を書籍、DVD、ワークショップ、および療法士によるトレーニングを通じて広く実践したのだ。ゴットマン夫妻はこれらの媒体を通じて、膨大な人々の結婚生活に影響を与えたが、これは彼ら自身のクリニックのみの活動や、プレスリリースのみではなしえなかったであろう。

 また、インテュイットのジョージ・ルーメリオティスが率いるデータサイエンスのチームは、同社が収集する大量のオンライン・データに基づいて製品機能を分析し製作している。彼のプロジェクトでは、それぞれの分析について話し合うためのシンプルな枠組みが奨励されている。

1.ビジネス課題についての自分の理解
2.ビジネスへのインパクトを自分はどう測定するつもりか
3.どのようなデータが利用可能か
4.最初のソリューションの仮説
5.ソリューション
6.ソリューションが生むビジネスへのインパクト

 上記には、統計手法の詳細、回帰係数、または対数変換などは含まれていないことに注意しよう。ほとんどの人はそうした詳細について理解できないし、ありがたいとも思わない。求められるのは結果であり、そこから得られる示唆なのだ。専門的な情報は、報告書やプレゼンテーションの付録に収めておけば有用かもしれないが、よいストーリーを伝える妨げにしてはならない。まずは相手が本当に知るべきことを、伝えよう。


HBR.ORG原文:Data is Worthless if You Don't Communicate It June 18, 2013

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トーマス H.ダベンポート(Thomas H. Davenport)
バブソン大学の特別教授。情報技術・経営学を担当。マサチューセッツ工科大学センター・フォー・デジタル・ビジネスのリサーチ・フェロー。インターナショナル・インスティテュート・フォー・アナリティクスの共同創設者。デロイト・アナリティクスのシニア・アドバイザーも務める。

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