この問題の重要性を理解するために、上司としての自分の行動を振り返ってみよう。部下の仕事に対する責任を果たすために、彼らに何らかの影響を及ぼそうとしているはずだ。部下の行動と、その基となる考えや感情に変化をもたらすためだ。

 その方法はいくつかあるが、すべては信頼から始まる(「やらなければクビだ!」という強制を除いて)。人に影響を与えるためには、相手側に影響を受け入れる意思がなくてはならず、その意思は信頼の上にのみ築かれる。

 あなたは一緒に働く人々、つまり部下や同僚、上司から、信頼されているだろうか? この質問は、信頼を2つの要素に分けて考えることでより有益な問いかけとなる。(1)あなたは、目的と手段を心得た有能な上司だと思われているだろうか。(2)あなたの人間性――意図、価値観、目標、そして最大の関心事――は人々に信頼されているだろうか。信頼とはまた、あなたが将来どう行動するかを人々が予想できるということでもある。そのため、正しい行動を取る能力と意思(人柄)がきわめて重要になる。

 あなたはいま、こう考えているかもしれない――「自分は基本的に有能だし、間違いなく善意に満ちている」と。もしそうであるなら、気をつけたほうがよい。数々の研究によって(リンダ個人の研究やケントの体験も含めて)、1つ明らかにされていることがある。ほとんどの上司は、自分に対する周囲の見解を過大評価しているのだ。そして実際には、自分に対する周囲の評価や信頼度は、直接尋ねない限りわからない。

 では、どのように尋ねればよいのだろうか。それは簡単なことではない。上司を信頼していない部下や低く評価している部下の口からは、真実はまず聞けない。上司を尊敬している場合でも、正直に「ここを直してください」とは言いたくないものだ。また、無能で自信のない上司が、「正直に言ってくれてかまわない」と前置きしたうえで意見を求めても、有効ではない。彼らが求めているのは結局褒め言葉であり、批判すれば怒られると部下の誰もがわかっているからだ。

 これらの困難を、どう乗り越えていけばよいのか。これは、じっくりと説明すべき重要なテーマであるため、次回の記事で取り上げたい。今回伝えたいのは、自分は上司として部下にどう思われているのかを積極的に探る必要があるということだ。そのような情報を自主的に教えてくれる同僚や部下はほとんどいない。

 いずれにせよ、部下に率直な意見を求めるには勇気が必要だ。それを受け入れて行動に反映させるためには、さらに多くの勇気がいる。しかし、優れた上司になるには避けて通れない道なのだ。そう考えると、世の中に優れた上司が少ないのにも納得がいくというのものだ。


HBR.ORG原文:The First Requirement for Becoming a Great Boss August 4, 2011

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リンダ・A・ヒル(Linda A. Hill)
ハーバード・ビジネススクールのウォーレス・ブレット・ドナム記念講座教授。経営管理論を担当。主な著書にBeing the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。

ケント・ラインバック(Kent Lineback)
著述家。リンダ・ヒルとの共著Being the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。