●大きなスケールで物事を考える
 南のリーダーたちは自国が大変動に見舞われるなか、これまで夢にも思わなかったチャンスが目の前に突然現れるという経験をしている。アメリカ企業ならば4%の収益成長をよしとするかもしれないが、南の企業は20%が普通だと考えている。中国のハイアール・グループのCEO、張瑞敏(チャン・ルエミン)は最初から自国の境界を超えて世界を見据えていた。「ほとんどの中国企業は、製品を輸出して外貨を獲得することを目的にしています」――彼は1980年代に、ハーバード・ビジネススクールの研究者にこう語っている。「それが唯一の目的です。輸出によってブランドを確立するのです」

 イノベーション、業務効率、ニッチ市場の獲得によって、張は北の先進国市場で大手メーカーと渡り合ってきた。そこで掴んだ成功を踏み台に、グローバルな競争で勝ち進んでいる。2011年に市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルが発表したランキングでは、ハイアールは家電の世界シェアで3年連続となる第1位を獲得した。小売販売台数はシェア7.8%を記録し、家電製品のグローバル・リーダーの称号を授かっている。(訳注:2013年の発表では世界シェアを9.7%に伸ばし、5年連続となる第1位。)

●素早く学習する
 南のリーダーたちは、(主に北半球の)投資銀行やコンサルタントからアドバイスを受けて最良のビジネスチャンスを見出す。そして、市場や業界で地位を確立し素早く事業を拡大させるために、業務提携、合弁事業、ライセンス取引、買収など必要となれば何でも利用する。デリーのインディラ・ガンディー国際空港を建設したインドのインフラ企業GMRは、参入を果たした時には空港の建設や運営について事実上何も知らなかった。同社のリーダーたちは、熱心に空港事業を学び、世界中のサービス事業者、貨物会社、免税品事業者、納入業者、建築家に会い、学べることはすべて学んだ。創業者の息子で空港事業を統括するキラン・クマール・グランディは、父親のG・M・ラオから学び方を習ったという。「私は子どもの頃から、父が他者との交流を通して学ぶやり方を見てきました。父は常に情報収集していたのです」

●素早く行動する
 南のリーダーたちは、目の前のチャンスに奮い立ち、その行動は決断力に富む。ブラジルのビール会社アンベブのCEOであったカルロス・ブリトは、成長に貪欲だった。ラテンアメリカで急速に事業を拡大後、2004年にベルギーのインターブリューとの合併を実現した。インターブリューのほうが大きかったが、ブラジルのリーダーが合併会社のトップに就任した。2008年にはさらなる大型買収に向け準備を整え、アンハイザー・ブッシュを獲得して世間を驚かせた。世界最大のビール会社、アンハイザー・ブッシュ・インベブの誕生だ。現在は、メキシコのビール会社グルポ・モデロの完全子会社化を狙っているが、独占禁止法の懸念から実現は不透明だ。(訳注:2013年6月に買収完了。)

 私は、グローバル・ティルトを経た後の世界がすべて南に牛耳られると言っているのではない。北の企業にとって重要なのは、この競争の性質を理解して、自社の経営――マインドセット、戦略、資源配分、および組織体制――を適応させることだ。2012年にプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、パーソナルケア事業の本拠地をシンシナティからシンガポールへ移し、GEは初めて香港に副会長を置いた。GEのCFO(最高財務責任者)キース・シェリンはこう述べる。「成長はここにあります。我々は新興国市場に会社の重心を移しています」。グローバル・ティルトを勝ち抜くには、まずその現実を知ることである。


HBR.ORG原文:Why the South Will Lead in the Global Tilt March 22, 2013

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ラム・チャラン(Ram Charan)
経営コンサルタント。ハーバード・ビジネススクール元教授。著書にBoards That Lead(邦訳『取締役会の仕事』日経BP社)ほか多数の単著・共著がある。