ランチ・ルーレットは、予期せぬ組み合わせを生むだけではなく、予期せぬ会話を促すことも多い。タンはR&D部門の従業員とペアになった時、このことに気づいた。まもなく施行される医療関連法の、特定の法案について話題が及んだのだ。「法律がR&D部門の人たちに影響しているなんて、考えたこともありませんでした」とタンは言う。「別々の仕事をしているように見えて、実は互いに深い関わりがある、ということを知るのはおもしろい経験でした」

 開始から4カ月が経ち(本記事執筆時点)、すでにこのアプリはさまざまな目的で使われている。当初の目的におおむね沿ったものもあれば、斬新な使用法も見られる。「ネットワークを形成するために、積極的に使っている人たちがいます」とタンは報告する。次の運用では、特定の職能でキャリアを積みたいと考えている従業員は、その部門の利用者とのマッチングを希望できるようになるそうだ。

 トンプソンは、採用面接のプロセスでもランチ・ルーレットが役立つと考えている。候補者はたいてい、採用側の関係者や他の候補者としか会うことがない。ランダムに選ばれた従業員と会う機会を提供すれば、採用側が自社の文化に自信を持っている証明になるだけでなく、部門横断的な意見交換が容易で、その機会も多くあるということを示せる。

 ランチ・ルーレットが特定のイノベーションや測定可能な業務改善をもたらしているかどうか、現時点での判断は時期尚早だ。だが人々のあいだでネットワークが広がり、つながりの結合点が豊かで強固になっていけば、それらはきっと実現するはずだ。最近のニューヨークタイムズ紙の記事では、研究者、設計者、製造ラインの人員が直接協働することのメリット(創造性と生産性の向上)に注目し、ゼネラル・エレクトリック(GE)の生産施設の事例を取り上げている(英文記事はこちら)。さらに専門家の指摘によれば、「製造業の集積地では、企業間で従業員どうしの交流やアイデアの交換が自然に発生する。このため、事業が地理的に分散されている場合よりも生産性と創造性が高い可能性がある」という。

 ビジネスとは結局、人である――誰もがそれをわかっているはずだ。ランチ・ルーレットは存在しなかったつながりを生み出し、従業員をさまざまなアイデアや視点に触れさせる実践的な方法だ。その潜在的な可能性には、利用者の胸中と同じように、ワクワクさせられる。


HBR.ORG原文:A New Way to Network Inside Your Company January 8, 2013

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シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI、前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)の創設者、所長兼エコノミスト。