価値観が多様化し、「何をラグジュアリーだと思うか?」ということへの答えも人それぞれになった昨今、ブランドがいくら情報を積極的に発信しても、商品の背景や文脈を読み解いてくれるリテラシーが生活者になければ、ほとんどが空回りで終わってしまいます。

「これは私が編集者だからかもしれませんが、ブランディングの本当の意義は将来のファンを育てることにあると思っているんです。特に高級品はTシャツ1枚を売るのとは違いますから、“本物”のすごさを理解してくれる人がいないと行き詰まってしまいます。必要なのは、自分たちが何者で、どんなカルチャーに属しているのかを辛抱強く伝えていくこと。だからLVMHはNOWNESSだけじゃなく、美術館をつくったり、新しい世代のクリエイターとコラボしたりと、どんどん挑戦の幅を広げているのだと思います」(田中氏)

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「ファッション界の帝王」の異名をとるLVMHのベルナール・アルノーCEO。2000年代前半からデジタル戦略をグループとして積極的に推し進め、数々の試みを行ってきた(画像/Bloomberg)

 実際、NOWNESSのデジタルEVP(エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント)で、LVMHのデジタル・メディア・ディレクター、カメル・ウアディは、「NOWNESSとはラグジュアリーに関する学びの場なのです」と説明しています(FASTCOMPANYの記事より)。

 さらに、ウアディEVPは別の媒体で次のような発言も。

「利益を上げることはNOWNESSにとって優先課題ではありません。サイトのデザインも広告スペースを入れることを前提にせず、ラグジュアリーを愛する人々に向けた情報発信の観点から行いました。(中略)もしメディアとして広告を入れるとしても、私たちが提供するラグジュアリーな体験を強化してくれるかたちを考える必要があるでしょう」(The Business of Fashionの記事より)

 NOWNESSをラグジュアリーに関する無償の学び場と捉えるスタイルは今も徹底されています。しかし、彼らはまったく利益を上げていないわけではありません。むしろ、ドルやユーロよりも、場合によっては貴重といえる資産を手に入れています。それは、ユーザーの趣味嗜好に関する情報です。