ブランドが資金を提供し、運営するデジタルマガジンなのに、どこにもブランド名が書かれていないのはなぜか? PRのサイトでないとしたら、LVMHにとってNOWNESSの役割とは、いったいどのようなものでしょうか。

デジタルへの入り口はブランド力ではなく、あくまでコンテンツの魅力

「エッジが効いたコンテンツを掲載することで、NOWNESSはファッションやアートに興味があるユーザー、つまりLVMHグループ系列のブランドのプロダクトや事業に関心を寄せてくれそうな人々が集まるサイトになっています。これは『どうしたらラグジュアリーブランドがウェブ上でブランディングを行うことができるのか?』という疑問に対する、LVMHなりの解答だと思います」

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都築千佳氏
『WWDジャパン』『WWDビューティ』編集長。丸紅を退職後、1997年にニューヨークのファッション工科大学に入学。ファッション・マーチャンダイジング・マネジメント学部専攻。99年に帰国後、INFASパブリケーションズ入社。13年4月から現職。

 そう語るのは、世界のファッションビジネス最新情報を発信する『WWD ジャパン』の都築千佳編集長。ラグジュアリーブランドにおけるオンライン空間のブランディングにつながっているとは、どういうことなのか。

「仕組みはこうです。コンテンツの魅力に惹きつけられてサイトのファンになり、NOWNESSに関する報道などを調べていくと、LVMHの媒体であることがわかる。LVMHは自社が運営していることを隠しているわけではありませんし、検索すればすぐにわかります。ただNOWNESSというサイトには明記していないというだけ。実はこの点が重要で、ブランドのロゴを前面に出さないことで、LVMHグループのブランドに興味がない人も巻き込むことができているのです。サイトへの入り口はLVMHがもともと持っているブランド力ではなく、あくまで個々のコンテンツ。すぐに企業の売り上げやイメージアップにつながるわけではありませんが、長期的な視点に立てば、このほうが現在のインターネットの特性を生かしたブランディングになっている印象です」(都築氏)

 従来のファッションや高級品の市場において、インターネットは「在庫を処分するための新しい販路」という位置づけだったと都築氏は言います。しかし、ソーシャルメディアが誕生して口コミが重視されるようになると、インターネットに求められる役割も、販路を確保するための“チャネル”から、ブランドの情報を積極的に発信するための“メディア”に変わっていきました。

 LVMHがeLuxuryというECサイトのあとにデジタルマガジンを立ち上げたのも、この流れとピッタリ重なります。ちなみに、NOWNESSがローンチした2009年はフェイスブックが先行していたMySpaceを抜き、世界最大のSNSサイトになった年でもあります。