●あせらずに取り組む
 年月とともに聞く力が衰えていくのには、理由がある。傾聴には、アクションと対照を成すかのような、消極的な印象があるからだ。手持ちの情報を基に、決断し行動に踏み出すほうが何倍も早い。だがそうすることで、重要事項に関して熟慮しなくなり、人間関係を築くチャンスを犠牲にする。より共感的な聞き方へと変えていく過程で、非効率さを感じることもあると知っておこう。人の話に真摯に耳を傾け、話の要点を伝え返しながら両者の理解を一致させていくには、時間がかかる。その見返りは大きいが、すぐに得られるものではない。

●自分を常に偽らず見つめる
 習慣を変えることは、自己規律、フィードバック、訓練なしでは不可能だ。常に我がふりを見直すよう努めるだけでなく、あなたが同僚や上司、役員などの意見や考え方にどれだけ同調しているかを、正直に評価してくれる同僚を見つけること。共感的な聞き方を毎日練習しスキルを強化するための、具体的な訓練計画を打ち出そう。人と話をした後には、その要点、相手の視点と背景、そして相手の感情を理解できたかどうか、自問することを習慣づけよう。加えて、あなたが相手を理解したことが相手に伝わったかどうかも自問すること。

 リーダーにとって、聞く力は成功のカギとなる能力の1つだ。聞くという行為は突き詰めれば、人間関係を築くことである。メッセージに込められた真の意図を理解し、その理解を相手に証明する能力は、人とつながりを築き効果的にリーダーシップを発揮するうえで何より重要な資質だ。リーダーの育成・輩出に長らく卓越してきたGEが2010年、リーダーに求める資質を再定義したのもこれが理由である。いまでは、「聞く力」をリーダー候補に最も要求される資質の1つに挙げている。GEの会長兼CEOジェフリー・イメルトは、「謙虚に耳を傾ける」ことをリーダーの4大資質の1つに数えている。

 真に共感を持って傾聴するには、勇気を――古い習慣を捨て、新しい習慣を身につける覚悟を――必要とする。最初のうちは、時間のかかる非効率的なこと感じるかもしれない。しかしひとたび身につけてしまえば、この聞く習慣こそが、リーダー候補を真のリーダーに変えるスキルそのものなのである。

HBR.ORG原文:The Discipline of Listening June 21, 2012

 

ラム・チャラン(Ram Charan)
経営コンサルタント。ハーバード・ビジネススクール元教授。著書にBoards That Lead(邦訳『取締役会の仕事』日経BP社)ほか多数の単著・共著がある。