ブランドのメッセージよりも、ブロガーの書き込みが信用される時代

 経営コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが発表したラグジュアリー市場のレポートによると、世界の個人向け高級品市場規模は2013年に約2170億ユーロと過去最高を記録。今後も成長が見込まれるものの、特に先進国ではブランド側に根本的な戦略の見直しが迫られることになると予測しています(ベイン・アンド・カンパニー「2013年 高級品市場レポート」)。

 大きな要因はインターネットを通じた「口コミ」の影響力の高まりにあります。今やラグジュアリー消費においても、インターネットで評判を確認してから店舗での購入を検討することは一般的な行いであり、その反対もまた然り。企業が口コミをコントロールすることはできないため、過去最高の市場規模となったものの、「高級品業界をとりまく状況は、以前にもまして厳しいものとなっている」と同社は結論づけているのです。

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ゴヴァース健二氏:ベイン・アンド・カンパニー、パートナー。20年以上にわたり、日米欧のラグジュアリー、アパレル、化粧品、食料品といった消費財企業への経営コンサルティングを数多く手掛ける。

 ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ゴヴァース健二氏は、現在のラグジュアリーブランドが直面している課題について、次のように語ります。

 「ファッション雑誌が主なブランドメッセージの担い手だった時代は終わりつつあります。欧米や日本といった成熟期に入った社会では、個人ブロガーやソーシャルメディアの投稿を重視する生活者のほうが多いかもしれません。こうした状況に対応するため、ブランド側も試行錯誤しています。そこで問われているのは、顧客をどのようにエンゲージしていくか。そのやり方がテーマになっています」

 “顧客をエンゲージする”とは、ブランドとの間に強い絆を築くこと。つまり、どんな情報発信のやり方であれば、顧客にブランドとのつながりを感じてもらえるかが課題になっているわけです。

 「ラグジュアリーブランドにとって一番の危機は、商品が機能面やお得感だけで比較されてしまうことです。歴史やクラフトマンシップといった物語こそがブランドをラグジュアリーたらしめているのに、インターネットの普及以降、ブランド価値の語り部が企業からブロガーに移ってしまった。例えばファッション業界では、ファッション雑誌よりブロガーの意見に生活者が左右されたりする。顧客をどのようにエンゲージするのかという課題は、結局のところ、どうやってインターネットにおける語り部の地位を取り戻すのかということに行き着くのです」(ゴヴァース氏)

 その方法のひとつが、魅力的なオウンドメディアを作り上げることで、ブランド価値を自ら積極的に発信していくこと。ただし、この“魅力的な”という部分には注意が必要です。