たとえば、私たちの著書『世界を動かす消費者たち 』に登場する58歳の農民、WX・リュウの世帯では、家計所得が著しく増加した。息子の工場での仕事と義理の娘のガソリンスタンドでの仕事からの収入のおかげである。

 私たちの分析によれば、2020年までに中国とインドの消費者市場は合計で年間約10兆ドルの規模に達する。そのなかで中国市場は約6.2兆ドル、うち農村部の町村の市場が1兆ドルを占める(残りの5.2兆ドルは中国の多数の成長中の都市の市場だ)。

 中国の現在の主眼は都市化にあるが、中国政府は農村部社会への再投資にも相当大きな取組みをしている。一見したところでは、農村部の人々の都市への移住がますます増えるため、農村部人口は企業にあまり利益をもたらさないように思える。農村部人口の中国全人口に占める割合は、2010年の約53%から、2020年には約45%に、可処分所得で農村部世帯が中国全世帯に占める割合は、現在の約25%から、2020年には15%程度に低下すると私たちは推定している。

 しかし、農村部市場にも豊かになりつつある地域がある。都市部と農村部の両コミュニティの構造改革を支えているのが、インフラ関連と農業分野の2つの改革である。後者に関しては、今後数年の間に、増大する都市部の食料需要への対応とともに、農民と農村部住民の所得向上を実現するための大きな改革が求められることは疑いの余地がない。

 具体的には、中国は以下の施策を持続することが望まれる。

●教育と技術研修の強化
●農村部のインフラ、機械化、かんがいへのより効果的な投資
●先進的作物学、新農業技術の研究開発の向上
●生産性の高い大規模農場を形成するための農地改革の継続
●農村部における収入源を多様化するための非農業分野の雇用創造
●農民の便宜向上のための情報技術・無線通信の利用拡大

 良いニュースは、これらの改革の多くがすでに進行中であることだ。中国全土の農村部と都市部双方における新中間・富裕層の急増という歴史的現象も、温首相が残した遺産のひとつとなろう。


HBR.org原文: Rural China Offers Big Opportunities, Too  February 6, 2013

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ボストン コンサルティング グループ(BCG)
世界をリードする経営コンサルティングファームとして、政府・民間企業・非営利団体など、さまざまな業種・マーケットにおいて、カスタムメードのアプローチ、企業・市場に対する深い洞察、クライアントとの緊密な協働により、クライアントが持続的競争優位を築き、組織能力(ケイパビリティ)を高め、継続的に優れた業績をあげられるよう支援を行っている。1963年米国ボストンに創設、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年には名古屋に中部関西オフィスを設立。2013年12月現在、世界45カ国に81拠点を展開している。

 

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『世界を動かす消費者たち』
2020年に10兆ドル、日本の3倍の消費が生まれる――。インドと中国の消費者は、新しい王や王妃として世界に君臨する。彼らは目まぐるしく変化する嗜好と欲求の持ち主であり、消費によって世界を変えようとしている。世界的経営コンサルティング会社、ボストン コンサルティング グループが徹底したインタビューと、21か国2万4000人に及ぶ調査、圧倒的なコンサルティング経験から、新世代の消費者の実像を描く。

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