2.ODM(Original Design Manufacturing)企業

 大手ブランドが商用化する最近のイノベーションの大部分が、名前も知られていないODM(相手先ブランドによる設計・製造受託)企業から生まれている。たとえば、台湾のコンパル・エレクトロニクス(仁宝電脳工業)は多数のノートパソコンの設計・製造を行っている。同社のクライアントには、ヒューレット・パッカード、富士通、シーメンス、ソニー、東芝など、イノベーター企業上位100社に名を連ねる企業が含まれている。台湾の別のODM企業、クアンタ・コンピュータ(広達電脳)は、アップルなどを顧客としている。

 フロリダ州に本社を置く電子機器のODM企業、ジェイビル・サーキットも、それほど有名ではない。しかし売上高160億ドルの同社は、中国の深センやインドのプネなど60カ国で事業を展開しており、多数のエンジニアを雇用している。ジェイビルのようなODM企業は「リファレンス設計」を顧客に提供することにより、設計、製造、イノベーションの業務を簡素化している。そして顧客である大企業は、リファレンス設計を自社向けに最適化できる。

 ジェイビルのそうした例の1つが、クラウド・コンピューティング市場向けのラックマウント型(棚に平積みできる形態の)ストレージ・サーバー、〈サンディ・クリーク〉だ。この製品は、インテルの〈Xeon〉(ジーオン)プロセッサーと最新のストレージ技術を組み合わせたもので、ジェイビル自身ではなくその顧客が販売する製品としてつくられている。別の例として、LED(発光ダイオード)による照明が主流になるなか同社の材料技術者は、LEDがオーバーヒートするのを防ぐための、導電性プラスチックを用いたヒートシンク(放熱板)を開発した。これらの例が示すように、ジェイビルは製品の新たな機能を開発している。

 ODMを活用することで、大手イノベーター企業の多くが市場における自社の力を拡大すると同時に、外注できない最も重要なプロジェクトのために、自社の人材を確保しておくことができる。

 企業が獲得した特許の数だけで、その国のイノベーションの水準を測ることは難しい。アメリカにおけるイノベーションが強力なのは、企業や技術分野のリーダーたちの多くが、よいアイデアならば世界のどこで生じたものでも取り入れようとするからだ。企業や国の長期的な成功を左右するのは、よいアイデアが社内や国内で生まれたかどうかには関係ない。グローバルな競争環境のなかで、そのアイデアから市場を創出するような製品を生み出せるかどうかである。私たちの生活全般において、新興国のイノベーターが果たす役割はますます重要になっている。

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HBR.ORG原文:Emerging-Market Engineers Power Global Innovation August 8, 2013

 

ビジャイ・ゴビンダラジャン(Vijay Govindarajan)
ダートマス大学 タック・スクール・オブ・ビジネス 教授
国際経営論担当。ゼネラル・エレクトリック(GE)で初の招聘教授兼チーフ・イノベーション・コンサルタントを務める。主な著書に『リバース・イノベーション』(共著、ダイヤモンド社、2012年)がある。

グンジャン・バグラ(Gunjan Bagla)
アムリットのマネージング・ディレクター。
アムリットは、カリフォルニア州に本拠を置きイノベーション・マネジメントを専門とするコンサルティング会社。著書にDoing Business in 21st Century India (Hachette、2008年)がある。