イノベーター企業上位100社は、自社のブランド力と、第三者の特許および技術力を組み合わせることによっても、メリットを享受できる。1980年代初期までは、イノベーションの大半は大企業内部の中央研究所で行われていた。アメリカのニュージャージー州にあるAT&Tのベル研究所、ミネソタ州にある3Mのイノベーションセンター、ロッキード・マーチンのスカンクワークスが、大企業のイノベーションの威力を示す代表例であった。では、この社内研究所を中心としたイノベーションのモデルがどのように変化したのか、次の2つの例で見てみよう。

1.製品開発の海外アウトソーシング

 まず、オーチス・エレベータについて考えてみよう。同社は、イノベーター企業上位100社に入ったユナイテッド・テクノロジーズの1部門である。設立161年、本社はコネチカット州にあり、エスカレーターやエレベーターなど、縦方向の輸送システムの設計・製造にかけては世界最大手だ。同社の次世代エレベーター〈Gen2〉(ジェンツー)は「機械室レス 」を謳い、従来のワイヤーロープに替わるポリウレタン被膜のスチール製フラットベルトを採用した。こうすることで、騒音やエネルギー消費、必要なスペースを減らし、従来は屋上に設置していた機械室も不要となった(大型のベルト式エレベーターにおいて重要な要素の1つに耐荷重性の終端装置があり、これは始動時と停止時に許容重量の6倍に達する重さに耐えるものでなければならない)。

 この技術に関するオーチスの特許を取った8人の開発者のうち、6人がインド人だった。実は、この6人のエンジニアたちはオーチスの従業員ではなく、インドのアンドラプラデシに本社を置く製品開発の受託企業に雇用されていた。筆者らは決して、アメリカのオーチスのエンジニアが創造力に欠けると言っているのではない。事実、ブレークスルーとなる次世代製品の多くが同社内で誕生している。しかし、ユナイテッド・テクノロジーズの先見の明あるリーダーたちは、遠い国にいるエンジニアや第三者企業で働く人々もオーチスの製品群の卓越性に貢献できると考えたのだ。

 つまり、外部の才能を活用できるオーチスのような企業は、社内のリソースだけにしか目を向けない企業に比べ、大きな競争優位を確保する、というのが筆者らの主張だ。海外への製品開発の外注は、ITやコールセンターの外注に比べるとあまり注目を集めない。しかし、俊敏なイノベーター企業にさらなる売上げをもたらす可能性を持っている。コンサルティング会社のブーズ・アンド・カンパニーの研究によると、こうした海外でのR&Dは、2020年までにインドだけで年間370億ドルを超えるだろうと予想されている。