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ムラカミカイエ氏:グローバルブランディングカンパニー「SIMONE」代表。デジタル施策を軸とし、国内外のファッション、ビューティー、ラグジュアリーブランドのクリエイティブディレクション、コンサルティングを数多く手掛ける。

「高級ファッションにおけるビジネスのモデルを根本から覆す出来事でした。ラグジュアリーブランドにとって、あまりにもリスクが大きいからです。ショーの反応がわからないうちから生産ラインを整えていたら、もし評判が悪かったときは大量の在庫を抱えるリスクを負ってしまいます。それでもバーバリーが踏み切ったのは、デジタル戦略を進めるうえで、eコマースのスタンダードに慣れたデジタルネイティブ世代の声と真正面から向き合ったことの表れでしょう」(ムラカミ氏)

 ソーシャルメディアで新しいコレクションの感想が拡散していたからeコマースサイトを見に行ってみたものの、商品が購入できるのは店舗に並ぶのと同じタイミング……。これではせっかくファッションショーをネット上に開放し、ソーシャルメディアで拡散してもらっても、現実の購買にまで結びつきにくいものです。

 一方、ファッションショーで見たばかりの新商品がすぐに予約でき、しかも店舗で購入するよりもはるかに早く手に入るとなれば、オンライン体験に“特別感”が加わることにもなり、思わず商品の購入を検討してしまうインセンティブが生まれます。つまり、ソーシャルメディアの拡散力をeコマースの売り上げに効果的につなげることができるのです。

 「バーバリーはプロモーションだけでなく、eコマースにおいても人々に対して開かれたブランドであることを示し続けています。ブランドとして強い一貫性があり、そこが魅力として、従来のラグジュアリーブランドがうまくリーチできなかったデジタルネイティブ世代にまで響いている。これはデジタル化の結果というよりも、『自分たちはどんなブランドを目指すのか?』という問いかけが先になければ達成できない。『バーバリーはユーザーに対して開かれたラグジュアリーブランドになる』という目標がまずあって、そこに向かってデジタル、特にソーシャルメディアが持つ双方向性を取り入れていったのです。ブランディングの本質が『他社との差別化』だとすれば、バーバリーの前には誰もチャレンジしていなかったという意味で、これ以上ない差別化に成功したと言えますね」(ムラカミ氏)