世界で求められる「金額に見合う価値」

 世界中の消費者が収入の範囲内でやりくりしようと苦心するなかで、低価格ながらすぐれた機能をもつ商品はあらゆる市場で最も急速に成長するセグメントになるだろう。「パイサ・ヴァスール」はインド人の考え方だが、インドや中国の農村部と同様、ニューヨーク、ロンドン、パリなどの都市でもすぐに求められるようになるだろう。

 先進国に近い地域での戦いの次の大きな戦場は、アフリカ、ラテンアメリカ、一部の東南アジア諸国となるだろう。こうした地域では、金額に見合う価値を追求するアプローチが必須となり、適切に実行すれば非常に大きな収益をもたらす。世界人口の3分の1にあたる26億人が新興国の都市に住んでいる。2030年までにこの人数は50%、13億人増加すると予想される。一方、先進国の都市の居住者は1億人程度しか増えない。

 中国・インドのみならず新興市場の新たに富を得た消費者たちは、より大きな住宅、よりよいインフラ、欧米の消費者になじみの深い新商品や快適な設備を求め、それらにお金をはらう用意がある。中国とインドで戦う企業は、そこでの経験を通じて、こうした新たな需要に応じられるよう十分準備を整えることができよう。

 つまり、「パイサ・ヴァスール」はインドに限らず多くの国々に急激に広がろうとしている考え方なのである。世界的な景気低迷を経て、あらゆる新興市場および先進国の消費者たちがお買い得品を探すようになっている。これは企業にとって、手頃な価格で高品質の商品を提供する独自の価値提案をしなければならないという意味がある。この戦略を的確に実行すれば、世界中の消費者をロイヤルティの高い顧客として囲い込むことができる。そうした消費者たちは何年にもわたり、継続購入し、友人にその企業の商品を試してみるよう薦め、消費を大幅に増やしてくれるだろう。

原題:Paisa Vasool(初出:BCG, Perspectives, 2012年9月)

*本稿の内容は、筆者らの共著による書籍『世界を動かす消費者たち』(ダイヤモンド社)を基にしています。
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ボストン コンサルティング グループ(BCG)
世界をリードする経営コンサルティングファームとして、政府・民間企業・非営利団体など、さまざまな業種・マーケットにおいて、カスタムメードのアプローチ、企業・市場に対する深い洞察、クライアントとの緊密な協働により、クライアントが持続的競争優位を築き、組織能力(ケイパビリティ)を高め、継続的に優れた業績をあげられるよう支援を行っている。1963年米国ボストンに創設、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年には名古屋に中部関西オフィスを設立。2013年12月現在、世界45カ国に81拠点を展開している。

 

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2020年に10兆ドル、日本の3倍の消費が生まれる――。インドと中国の消費者は、新しい王や王妃として世界に君臨する。彼らは目まぐるしく変化する嗜好と欲求の持ち主であり、消費によって世界を変えようとしている。世界的経営コンサルティング会社、ボストン コンサルティング グループが徹底したインタビューと、21か国2万4000人に及ぶ調査、圧倒的なコンサルティング経験から、新世代の消費者の実像を描く。

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